不動産活用ネットワークは、不動産オーナーのお困りごとに対して最短最適な解決策を提供するために、企業の垣根を越えて協力し合うことを目的とした不動産業のプロ集団です 。 Q&Aコーナーではオーナー様からのお悩みと専門家による解決方法をご説明いたします。
今回のご相談
不動産そのものは分割内容に応じて取得することになりますが、遺産分割が決まるまでの間に生じた賃貸収入は誰に帰属することになるのでしょうか。
・相続発生~遺産分割決定までの帰属
・遺産分割決定後の帰属
・遺産分割決定後に遡って修正できるか
相続発生~遺産分割決定までの帰属
実際に相続が発生した場合、当面は様々な手続きに忙殺されることとなりますし、また心の平穏を取り戻すのにも相応の時間がかかるでしょうから、遺言書があるような状況を除けば遺産分割が決まるまでには通常数か月程度の期間を要します。また、相続人間で争いが生じた時はさらに長い年月をかけて決着を目指すこととなります。
遺産分割が決まるまでの間に生じた賃貸不動産収入は、各共同相続人の共有に属するものとなり、それぞれの共同相続人の法定相続分に応じて帰属することとなります。
例えば相続人が長男と長女である場合、長男と長女にそれぞれ1/2ずつ収入が帰属し、その帰属分に基づいて所得を申告することとなります。
実務上は未分割の間、共同相続人の誰かが代表して管理するようなケースも見られますが、その場合でも上記のように法定相続分で申告することとなります。
未分割で誰にも帰属していないのだから申告不要、などと早とちりしないように留意しましょう。
遺産分割決定後の帰属
遺産分割決定後の賃貸収入については、当然ながらその賃貸不動産を相続することとなった者に帰属します。
このように所得の帰属について悩ましいところはありませんが、実務上は分割決定に伴い借家人に家賃振込口座の変更連絡をするなどの手続きが必要となってきます。また、賃貸不動産にかかる経費についても相続した物件ごとに区分し、各相続人に正しく帰属させることも重要です。
これらの手続きがスムーズに進まないと、後日相続人間で精算を行う必要が生じてしまい、余計なトラブルのもととなりかねませんので、なるべく早めの手続きを心掛けましょう。
遺産分割決定後に当初申告の内容を遡って修正できるか
無事に賃貸不動産の遺産分割が決まったとして、その分割内容が必ずしも当初申告分と同じく法定相続分になるとは限りません。法定相続分とは違う決着となったとすると最終的な賃貸不動産の帰属と、未分割状態だった時の所得帰属は自ずと異なることとなります。
このような場合、過去の未分割財産の申告内容を実際の分割内容に合わせて修正申告又は更正の請求(※)を行うことはできるのでしょうか。
答えはNOです。遺産分割が確定したとしても、その分割の効果は未分割期間中の所得帰属には影響を与えないものとされています。したがいまして、当初申告の内容を遡って修正することはできません。
(※)所得が増額して税額を追加納税するケースを修正申告、所得が減額して税額を還付請求するケースを更正の請求といいます
面倒なことにならないように生前の事前準備が大事
賃貸不動産の収入一つを取り上げただけでも、このように独自のルールがあります。通常、相続財産には賃貸不動産以外の財産が含まれていますので、それぞれのルールに沿って分割を行い、正しい申告をするのはなかなか苦労するものです。
こういった苦労を回避するには、親子間で綿密な話し合いを行って遺言書を整えておくなどの対策が必須といえるでしょう。
今一度、いずれ来るべき将来の相続について親(子)と話し合ってみてはいかがでしょうか。