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不動産市場では流通しない土地建物の 物理的・時間的隙間をITで活用する スペースシェアのパイオニア

 

遊休資産の有効活用が時代のニーズとマッチし、近年注目を集めている“シェアリングサービス”。2008年に創業した軒先株式会社は、「空きスペース」にこのシェアリングサービスを適用し、1日でもお店を開ける「軒先ビジネス」、外出前に駐車場を予約できる「軒先パーキング」など、新しい価値を提供している会社です。代表取締役の西浦明子さんにこれらの事業の魅力、今後の展望についてお話を伺いました。

「こんなサービスがあったら」の思いから
名もなきスペースを探すスキマハンターに

軒先株式会社が取り組んでいるビジネスについて教えてください。

一般的に不動産の活用というと賃貸や売買が主な取引形態ですが、弊社は第三の取引形態として“シェアリング”という形で不動産活用の提案を行っています。具体的には土地建物を貸してくださる方と、そのスペースを一時に使いたい方をおつなぎするための3つのプラットフォームをインターネット上で提供しています。まず創業時から行っているのが、「軒先ビジネス」という小売り営業スペースのシェアリング。さら駐車場のシェアサービスである「軒先パーキング」、飲食店シェアサービスの「magari軒先シェアレストラン」という3つを手がけています。

そもそも、西浦さんはなぜこのようなビジネスを始めようと思ったのでしょうか?

実は出産のタイミングで、子育てをしながらできる仕事はないかと考えていました。それで私は海外に長く住んでいた経験があるので、「雑貨を輸入してネットショップを開こう」と思ったんです。ただしいろいろなリスクがあると予想されたので、事前にテスト販売をしてみたくて。1カ月、または数週間店舗を借りようと思い不動産会社を訪ねたのですが、そもそも短期で借りられるところはありませんでした。でも商店街などを見てみると、週替わりで新しいお店が入るウィークリーショップを見かけますよね。このように名もなきスペースを使わせてもらうことができれば、誰でも簡単にお店が開けるだろうし、不動産を持っている方にとってもちょっとした収益になるはず。こういったところをうまくマッチングできれば、新しいニーズの掘り起こしになるのではないか?と考えて。あくまで「こういうサービスがあったらいいな」という自分の思いが起業のきっかけになりました。

西浦さんは「スキマハンター」と呼ばれているそうですね。

はい(笑)。ものを売りたいと思う人の視点で街中を見てみれば、売り場になりそうなスペースは結構あるんです。それを探し続けているので、「スキマハンター」と呼ばれるようになりました。

西参道の空きスペースにおしゃれなマルシェが登場

現在「軒先」で手がけている3つの事業(「軒先ビジネス」「軒先パーキング」「magari」)では、不動産オーナーさま側にとってどのようなメリット、デメリットがありますか?

運用にあたってオーナーさまに何か投資していただいたり、追加で開発するお金を出していただく必要は一切ありません。たとえば「軒先パーキングを始めたい」と思われたら最短だと明日から運用することができますし、かつ即日止めても大丈夫です。そういう意味では、運用の最初のハードルが非常に低い、といえるでしょう。一方デメリットとしては、弊社が安定的な収益をお約束するものではないので、どなたも利用されなかったら、利益は発生しません。ただし経済的リスクがないので、精神的・経済的な負担なく始めていただけるのが一番の特徴だと思います。

軒先ビジネスでお客さまが集まり
周辺環境が改善されていった

3つの事業について、それぞれ実際の活用例を教えていただけますか?

まず「軒先ビジネス」は利用される方の種別が多岐にわたっているので、売り場としてある程度成り立つような立地に空き地や隙間スペースを持っている方にご検討いただきたい事業です。たとえばキッチンカーを誘致した場合、周辺にランチのニーズがありそうな土地をお持ちの方にお勧めしたいです。他にも商業ビルやオフィスビルをお持ちの方、ないしは老舗の高い土地や建物をお持ちの方は「軒先ビジネス」にフィットすると思います。またこのサービスのもう1つの良い点は、商品を買いにくるお客さまが集まってくることです。よくある事例としてはゴースト化してしまったビルの一階部分をお貸出しして、そこにキッチンカーを出店してもらうと、新しい人の流れが生まれます。それまでは明かりが消えて暗かった建物に人が集まることによって周辺地域の環境が良くなっていったり、にぎわいづくりに役立ったりしているようです。

キッチンカーが出店するようになり、古かったビルの周辺も活気が戻る

「軒先パーキング」についてはいかがですか?

「軒先パーキング」に関していうと、日本はどこでも駐車場のニーズがありますので、住宅街でもオフィス街でも構いません。たとえば「高齢で免許を返納し、クルマもなくなったので家の駐車場が空いている」という戸建てのオーナーさまも対象になります。他にも月極駐車場の空いてるところを次の契約が決まるまでの間貸していただくなど、車が停められるような場所であれば、いろいろなところが当てはまるのではないか、と思います。

コインパーキングと違って、機械が必要ない点も良いですね。

はい。機械を設置したりするスクラップ&ビルドの工事がいらないので、中には「パーキングの工事が始まるまでの3カ月だけ貸します」という方もいらっしゃいます。

大勢の観客が集まる新潟県 「長岡まつり大花火大会」でも軒先パーキングが活躍

「magari軒先シェアレストラン」に関しては?

「magari」はちょうど2年前に個人の方の飲食店開業を支援したい、という思いから始めたサービスです。いわゆる飲食店の空時間帯、夜のみの営業であるバーや居酒屋であれば昼間の時間帯を貸していただいて、別の業態の方が昼だけカレーをランチで販売する、という間借りのサービスを行っています。ただ今までの2つと違うのが、貸主さまが不動産所有者さまではなく、オーナーさまから店舗を借りているテナントさまが貸しているんです。そのため一般的にいう、転貸借にあたるのではないかと解釈をされやすいのですが、あくまでもキッチンを期間限定でレンタルするという形で不動産オーナーさまには事前に承諾を取っていただき、貸出してもらうというサービスを行っています。

「magari」として昼間はチーズティーを提供する場所に

ITを駆使して街づくりを意識した
事業経営を行っていきたい

御社の強みはどんな点にあると思いますか?

弊社の事業の柱はITサービスなので、まねをしようと思ったらいくらでもコピーできるんです。ただ枠はできても、結局その中には不動産というコンテンツを入れていかない限りは、商売としては成り立ちません。不動産もいかに仕入れができるか、というところにかかっていますよね。単にインターネット上で口を開けて待っていても、お客さまは来てくださらない。不動産会社さまや管理会社さまなどいろいろなネットワークを通じ、10年間アナログな地上戦を繰り広げてきました。当社は他社より少し長くやってきていて、かつ1つのオーナーさまに対して、3つのソリューションを提供できます。オーナーさまからのお困りごとに対して「この土地だったら駐車場に向いていますね」とか「これだったらキッチンカーが良いのでは?」と多様なソリューションを提供できるのが、一番の強みかと思います。

西浦さんが仕事に取り組む上でのモットーや、いつも心掛けていることを聞かせてください。

私は「こういうサービスがあったらいいな」という思いから起業したので、自分ごととして解決したい課題があり、かつその痛みがどれだけ大きいかが非常に重要だと思っています。悩みを抱えていらっしゃる方が多い課題であればあるほど、解決していく意味があると思いますし。特に私たちの会社が行っている事業はインターネットを使ったサービスなので、ITを使って解決できる“語りの大きさ”という点は常に意識をしています。

不動産業界をどのように支えていきたいと思われますか?

私たちが手掛けているプラットフォーム事業を通じて日々感じることは、周辺の街や地域の魅力を上げていかないと、最終的にその土地建物の価値は上がっていかないということです。だから今ある資産をうまく活かし、街づくりといったところを意識した事業経営をしていけたら、と思っています。そこで一番大事になってくるのは、お金をかけないこと。ITを使って解決できることは大きいので、そういった点で貢献していきたいです。

 

 

(構成/文 桂泉晴名)