今回のご相談
好調だった都心の賃貸マンションにも影響か
近年、都市部の人口増加が進み、賃貸マンションの稼働率は高い水準を維持してきました。需要が堅調な中、供給量は大きく増えなかったことで、空室率は最低水準を記録していました。ですが、足元では新型コロナウイルスの影響で新規入居が減ったことにより、空室率が上昇しています。また、新型コロナウイルスのまん延で在宅ワークが定着しつつあることから、職住兼備の環境を求めて、都心から郊外へ転居を考える方も増えてきています。このような新しい動きも都心部のマンションの空室率に影響しますが、依然として住まいの需要はありますので、今後も比較的安定した賃料収入が期待できると思います。
在宅ワークの定着によりオフィスビルの空室率の上昇が続く
昨年(2020年)から都心に拠点を置く多くの企業が在宅ワークを導入し、積極的に取り組むことにより出社率を制限していました。実際、本年(2021年)6月の都心の空室率は6%台に達し、2014年7月並みの水準に戻りました。供給過剰の目安とされる5%を5か月連続で上回っていて、働き方の劇的変化を受け、オフィスを移転縮小する動きも活発になってきています。また、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、対面型イベントの自粛が続き、既存ビルでもセミナールームや会議室などの解約が続いている状況です。ワクチン接種が進むにつれ経済活動が通常に戻り、空室率は改善されると思いますが、見通しが立たない限り、厳しい状況が続くと思います。
商業施設・ホテルセクターは依然として厳しい
ホテル・商業ビルはコロナウイルスの影響が最も大きかったセクターです。新型コロナウイルスの影響で外国からの入国も厳しく規制されて、宿泊と飲食の需要やインバウンド需要は激減しました。一時的にGoToトラベル事業の効果は見られましたが、国内感染拡大により再び行動制限が課され、一進一退の状況が続いています。新規感染者数の推移に応じて緊急事態宣言やまん延防止措置が講じられ、百貨店など大型商業施設から小売店まで時短営業などの対応を続けており、低調が続く売上に閉店・退去するテナントも増えています。このセクターが回復するカギとなるのは、新規感染者数であることから、今進んでいるワクチン接種による感染者数、重症化率の変化が注目すべきポイントです。
コロナ禍による巣ごもりが追い風、物流セクター
物流施設の空室率はEコマースの市場浸透に伴い、低下傾向にありました。足元ではコロナ感染拡大による在宅・宅配需要が高まり、空室率がさらに低下しています。働き方改革が本格的に進めば、中期的にはオフィスビルや都心部の住宅の需要は減少すると思いますが、物流施設の需要はむしろ増加し、空室率は歴史的な低水準に達する可能性があります。
日常的消費の形態が対面からオンラインに変わりつつあり、堅調な需要に応える形で、空港や港湾、高速道路インターチェンジなど、交通の要所に新しく物流センターを開設する企業も増えています。コロナ感染拡大や米長期金利の動向など、今後の展望について不安は残りますが、年後半には安定成長が期待できる物流REITのIPO・PO案件が増えて、さらなる個人資金の流入も見込めると思います。
割高感を警戒しつつ、有望なセクターと新しい取り組みに注目!
コロナウイルスの感染拡大は人々の生活にあらゆる形で影響を与えました。一時期は人・ものの移動が制限され、電鉄や空運からホテルなど、宿泊業まで大きく打撃を受けました。規制緩和により交通機関は回復していますが、緊急事態宣言が再び発令され、オリンピックも無観客開催が決定し、商業施設や宿泊業の低調は続いております。半面、自宅にいながら仕事ができる、買い物ができるなど、在宅ワーク・巣ごもり消費への移行が進み、ネット販売や物流施設に関連する企業は逆に大きく恩恵を受けて業績を伸ばしています。このように不動産市場でもコロナの影響により厳しい状況が続くセクターと業績が大きく伸びているセクターで明暗が分かれています。ですが、東証REIT指数は昨年(2020年)急落して以来、海外投資家の資金流入により急回復し、指数はコロナ前の水準に戻ってきています。今後はさまざまな思惑で変動する相場の中で、有望なセクターとシェアオフィス・脱炭素など既存事業の新取り組みに注目する必要があります。