加盟社リレー寄稿Q&A

最近よく聞くようになった「ゴーストレストラン」の正体とは?

不動産活用ネットワークは、不動産オーナーのお困りごとに対して最短最適な解決策を提供するために、企業の垣根を越えて協力し合うことを目的とした不動産業のプロ集団です 。 Q&Aコーナーではオーナー様からのお悩みと専門家による解決方法をご説明いたします。

今回のご相談

不動産オーナー
不動産オーナー
最近、新しい飲食形態として「ゴーストレストラン」という業態があると聞きました。一体どのようなサービスなのでしょうか?また、不動産オーナーとしてどのようなお付き合いができるでしょうか?
西浦明子
西浦明子
デジタル化の浸透が進みにくかった飲食業界もここ数年で一気にIT化が進んでいます。一般に「フードテック」と呼ばれ業務の効率化を目的としたDX系やシェアリングエコノミーを活用したサービスなどが続々と出てきています。コロナ禍における巣ごもり需要の増加により、外食の機会が減る一方で新たにテイクアウトやデリバリーをはじめる飲食店が増えています。中でもUberEatsをはじめとするデリバリー業者の急成長で「ゴーストレストラン」という業態が急増しています。

そもそも「ゴーストレストラン」とは?

「ゴーストレストラン」とはその名が表す通り、実体(店舗)のない飲食店のことを言います。これまでは店舗で調理した料理を来店されたお客様に店内で提供するのが一般的な飲食店のスタイルでした。このゴーストレストランでは厨房で仕込みや調理を行いますが、店内で接客や料理の提供はしません。作った料理はすべてデリバリー業者を通じて販売されるのです。こうしたゴーストレストランの急増の背景には、いうまでもなくデリバリー市場の拡大とともに数多くのデリバリー業者の台頭があります。
2016年に日本に上陸した「Uber Eats」を始め、2000年からスタートしている「出前館」や「Rakuenデリバリー」などすでに認知されているサービス以外に「Chompy」や「menu」などに加えてシンガポール発の「foodpanda」やフィンランド発の「Wolt」など海外勢もさらに参加し過熱しています。

ゴーストレストランのメリットとは?

ゴーストレストランのメリットとは、ずばり初期費用と固定費の最小化です。通常の飲食店と比べて、必要な店舗のサイズは客席が不要な分ぐっと小さくなります。また、接客が不要ですので必要な人材も少なくて済みます。調理するのに必要十分な厨房さえあればどこでも開業することが可能です。また、一般的に通常の飲食店では視認性が高いことや、アクセスのしやすさ、立地の良さなどが売上にかなり影響する部分がありましたが、ゴーストレストランでは集客はWEB上で行うため、これらの条件を満たす必要がありません。つまり、裏通りにあろうが、空中階にあろうが全く集客に影響がないというが大きなメリットではないでしょうか。
ただし、全ていいことづくめというわけではありません。デリバリー業者のサイトにあるたくさんの飲食店から自分の店舗を選んでもらったり、常に上位表示してもらうための施策など、競争が激化している中でデリバリー特化飲食店ならではの特徴を出し続ける必要があります。

どんなところでゴーストレストランを開業できる?

新規にゴーストレストランを始める方は、おもに2つのパターンで開業されることが多いです。1つは「クラウドキッチン」と呼ばれるゴーストレストランに特化した専門の厨房物件です。1つの店舗の中に複数の厨房が設置されており、デリバリー受注に必要なインターネット環境やタブレットなどが予め設定されています。こうした専用のキッチンを月単位で使えば、厨房設備などの初期投資不要でゴーストレストランを始めることができます。国内では「KitchenBASE」というクラウドキッチンサービスがあり、中目黒・神楽坂など複数拠点で展開しています。
もう1つは既存の飲食店の空き時間帯を間借りするパターンです。夜からしか営業していない居酒屋の朝~昼間の時間帯を使ってゴーストレストランを開業する方も増えています。空き時間帯を貸し出す店舗オーナーにとってもメリットのあるサービスです。弊社が運営している「magari」では国内約400店舗ほどの登録があります。

不動産オーナーから見た「ゴーストレストラン」の可能性とは?

前述の通り、ゴーストレストランを開業するには、これまで飲食店にとって優位な条件と思われていた好立地が不要になります。視認性のあまりよくないロケーションでも、また築年数の古いビルでもクラウドキッチンの出店場所として十分となる可能性があるのです。デリバリーのニーズが高いエリアであれば、これまで価値が付かなかった物件が新たな評価をされるかもしれません。クラウドキッチンの運営には相応のノウハウが必要ですので、自前で運用するのは難易度が高いですが、新たなテナントとしてこうした新業態を選択肢に入れてみるのはいかがでしょうか?
また、すでに飲食店をテナントとしてお持ちのオーナー様には、既存テナントの退店を防ぐ1つの手段として、間貸し・間借り運用を認めテナントの経営を安定化させることもテナント物件の運用をうまく継続していくきっかけになるかと思います。

時代の変化を敏感にキャッチ

社会情勢や生活様式の変容に伴い、既存業界にも様々な変化が生まれています。これまで価値があったものが急に評価が下がったり、逆に誰にも見向きもされなかったものが日の目を見るようになったりします。日々、変化に敏感に対応していくことが新たなビジネスチャンスのきっかけになったり、リスク回避につながります。直接不動産に関係なさそうな新規ビジネスにもぜひ注目してみてください。

 

 

ABOUT ME
西浦明子
西浦明子
軒先株式会社 代表取締役 スキマハンター。 大学卒業後、ソニー株式会社等での勤務経験を経て、2007年の妊娠・出産を機に起業を決意。2008年4月に日本初のスペースシェアリングサービス「軒先」代表としてサービスを開始、2009年に軒先株式会社を設立。ポップアップ向けスペースシェアの“軒先ビジネス”、駐車場シェアの“軒先パーキング”、飲食店シェアの”軒先シェアレストラン-magari”を運営。2017年総務省ICT地域活性化大賞・奨励賞受賞。現在、全国の遊休スペースの活用提案に奔走中。