不動産活用ネットワークは、不動産オーナー様が直面している課題に対して最短最適な解決策を提供するため、企業の垣根を越えて協力し合うことを目的とした不動産業のプロ集団です。 この『対談』では、毎回テーマを決めて、日々オーナー様から寄せられる「お悩み」や「お困りごと」に対し、【専門家による多角的な視点での解決策】をお伝えしていきます。
賃貸経営のかたわら、金融商品などへの投資にも取り組んでいるビルやマンションオーナーは多いのではないでしょうか。昨今、新NISAや日経平均の高騰、円安などの話題とますますマーケットへの注目度が高まっています。今回は、証券会社で相続の専門部隊として活動をしているアイザワ証券株式会社の久保仁と、賃貸不動産オーナー専門の保険のプロとして様々な課題解決を図っている保険ヴィレッジの斎藤慎治が、賃貸経営オーナーに必要な資産運用方法とポイントについて対談しました。
前編は、【賃貸経営オーナーが知っておくべき資産活用~保険と投資のあり方】をテーマにお届けしました。まだ、前編をご覧になっていない方は ⇒ コチラ
※ア:アイザワ証券| 保:保険ヴィレッジ
法人オーナーの相続対策は死亡退職金・弔慰金も活用
久保/ア
前編では、賃貸オーナー個人を主体にして生命保険と投資のあり方について話をしてきました。後編では、損害保険や資産管理会社などの法人に関わる部分についてのお話をしていきたいと思います。
斎藤/保
畏まりました。
法人の場合は、生命保険を活用して役員死亡退職金の準備をしておくことをお勧めします。こちらにも、個人の生命保険の死亡保険金と同様に法定相続人1人あたり500万円の非課税枠があります。
もちろん、死亡退職金は生命保険の非課税枠とは別枠で利用できるため、場合によっては大きな効果が期待できます。役員退職金規定の作成とあわせて是非検討していただきたいと思います。
久保/ア
法人で賃貸物件を所有されている方は、こちらも必須ですね。
斎藤/保
賃貸経営を含む不動産投資の世界では、「金利」「税金」「修繕費」が三大経費といわれています。ただ、漫然と物件を所有しているだけでは儲かりませんし、買って終わりではありません。金利と修繕費の部分は今回のお話の趣旨から外れますので割愛しますが、税金については、生命保険で戦略的に備えておく必要があります。
久保/ア
金融業界にいる身としては金利上昇や、最近は自然災害も多いので修繕費も気になるところですが、やはり税金が一番心配ですね。
斎藤/保
事業税、所得税、そして相続税。特に相続税は、ある程度先を見越して予防的に備えなければいけないので厄介です。
久保/ア
それは、私が相続関連サービスのひとつとして行っている事業承継でも同じことがいえます。
斎藤/保
以前、こちらの対談でもお話したのですが、合同会社はそもそも承継できないという相続リスクもあります。融資の際に合同会社の設立を勧めた金融機関も、税理士でも普段から相続や事業承継に関わっていないと、このリスクが分かっていない可能性が高いと思います。
久保/ア
費用を掛けてでも専門家に相談することが重要ですね。
斎藤/保
逆に証券会社として、特に法人をお持ちの方にお勧めすることは何かありますか?
久保/ア
不動産管理法人で別事業もなさっている方で、従業員を抱えているオーナー様向けには、新NISAなどに関して社内で学ぶ「投資勉強会」の開催や、「確定拠出年金制度」の福利厚生のご提案をして喜ばれています。
斎藤/保
確かに賃貸物件オーナーで他の事業をなさっている方も多いですね。
久保/ア
日本は人口減という未来が見えており、今後ますます人材不足が進んでいきます。優秀な従業員を確保するためにも福利厚生の充実化は必須です。
斎藤/保
別事業の収益悪化が、賃貸経営に良からぬ影響を及ぼす可能性もありますから、注意が必要ですね。
賃貸経営は情報戦!?
久保/ア
証券業界は、新NISAの話題でもちきりですが、保険業界で注目されていることはありますか?
斎藤/保
昨年、某大手中古車販売会社のニュースが世間を賑わせましたが、あれは要するに損害保険の不正請求のお話でした。この影響が大きいですね。
久保/ア
かなり話題になりましたが、自動車業界だけではなく不動産の世界にも影響があるのですか?
斎藤/保
部門が違うだけで同じ損害保険会社ですから影響大でしたね。あれ以来、損害保険会社の査定が厳しくなり、結果が判るまで時間が掛かってしまったり、最終的に保険金が下りなかったりするケースもでてきました。
しかも、こちらも以前の対談でお伝えしましたが、大切なことなので再度お話しますと、損害保険業界の制度変更により以前は破損などの損害が確認できれば下りていた保険金が、修理完了後にならないと受け取れなくなりました。
久保/ア
要するに修理費の一時立替え払いをしなければならなくなって、そのための現金が必要になる。
斎藤/保
実は資金繰りの問題だけではなく、軽微な損害の場合などは修理をせずに別のことにその保険金を流用することが多かったのですが、それが出来なくなってしまった影響が結構大きいと思います。なかには保険金で新しい車を買ってしまっていた方もいらっしゃるかもしれませんが、多くのオーナーは物件のリフォームをしたり新たな設備を購入したりと、入居者が喜ぶこと、物件の魅力度向上に活用をされていました。
久保/ア
賃貸オーナーは、そういった情報を把握しているのでしょうか?
斎藤/保
損害保険の担当者とこまめに連絡を取りあっているか、オーナー自身がインターネットや勉強会などで積極的に情報収集を図っていない限り恐らくご存じないと思います。
久保/ア
インターネットやスマートフォンが普及したお蔭で便利になりましたが、関連するサービスの担当者と対面で会うことが減ったために必要な情報が届かなくなってしまっています。これはある意味、証券業界のインターネット取引の普及と同じですね。自分自身で情報収集する力と知識があれば手数料の安いネット上のサービスが良いのは当たり前ですが、やはり対面には対面の良さがあります。
久保/ア
顔を合わせることによる何気ない会話が注意喚起の機会になるかもしれません。対面ですとどうしてもネット取引との手数料が比較されてしまいますが、担当者の一言が収益に繋がったり、損害を免れたりと結果的に良かったということもありえます。
斎藤/保
本当に充分にありえるお話しだと思います。これは証券会社の方も同じかもしれませんが、我々の仕事は最終的に契約をいただく前段階が重要。保険の内容や仕組みが大切なのは当然ですが、その前段階でのヒアリングやコンサルティングに本質的な価値があります。
斎藤/保
自動車保険の例が分かりやすいと思いますが、テレビCMなどでネットが安いからといって契約したのはよいものの必要な補償が入ってなくて、不必要なものが入ってしまっている。肝心な時に保険金が下りなかったという話をかなりの頻度で耳にします。
斎藤/保
昨今、昭和的な「直接訪問して顔をださないのは不誠実だ」というような考えも減ってきましたし、コロナの影響でオンライン会議も当たり前になりました。リアルで対面する必要もありませんし、実際、損害保険の契約をオンライン打合せとGoogle社の『ストリートビュー』での物件の確認だけで行うこともあります。極端な効率主義に陥ってはいけないのは当然として、一番大切にすべきなのは、リアルかオンラインではなく、お互いの時間を有効に使って密にコミュニケ―ションを図ることだと思っています。
久保/ア
ネットと対面の良さを活かしてバランスよく。そして、最後は信頼関係ですね。実は、先日、生命保険の見直しを勧められたのですが、信頼感が無いわけではないのですが、そこまで労力をかけてやるべきか判断がつかないことがありました。
斎藤/保
保険証券をみせていただければ処方箋を書きますよ。もちろん、契約してくれなんて野暮なことは申しません(笑)
斎藤/保
ご安心ください(笑)
会社として賃貸オーナーに特化してサービスを提供しているのは、現実問題としてあれこれ手を出しても対応しきれなくなったこと。そのほうが賃貸経営に関連する情報が集まりやすくなってノウハウも蓄積できる。そしてそれを活かして、賃貸物件をお持ちの大家さんに向けた最適なアドバイスができるようになると考えてのことでした。
久保/ア
「あなたに必要なのはこれ!」という安心感。賃貸オーナーが我々のような立場の人間に求めているのはまさにこの安心感だと思います。
斎藤/保
久保さんご自身でもクライアントの方のお悩みでもお気軽にご相談ください。
本日はありがとうございました。
アイザワ証券株式会社 久保仁
保険ヴィレッジ 斎藤慎治
前編では、【賃貸経営オーナーが知っておくべき資産活用~保険と投資のあり方】をテーマに対談していいます。