対談インタビュー

不動産のシェアで実現する社会課題の解決とは?

不動産活用ネットワークは、不動産オーナー様が直面している課題に対して最短最適な解決策を提供するため、企業の垣根を越えて協力し合うことを目的とした不動産業のプロ集団です。 この『対談』では、毎回テーマを決めて、日々オーナー様から寄せられる「お悩み」や「お困りごと」に対し、【専門家による多角的な視点での解決策】をお伝えしていきます。

いまや当たり前となったシェアサービスの波は不動産の世界にもきています。今回は、不動産の使われていないスキマを見つけ、それを利用したい人とのマッチングする【スキマハンター】との異名をもつ軒先株式会社の西浦明子と、管理会社の立場で不動産オーナーから不動産の更なる利活用などに関する課題に日々向きあっている株式会社ハウスメイトマネジメントの伊部尚子が対談しました。

前編は、【シェアがもたらす新たな不動産の利活用方】をテーマに、都会から郊外へと広がるシェアビジネスについて、キッチンカーやシェア駐車場の例をもとにお届けしました。
まだ、前編をご覧になっていない方は ⇒ コチラ

内 容

▼郊外でこそ喜ばれるシェアの可能性
 -キッチンカーの普及と地域マルシェ
 -不利を有利に変える土地活用の視点

▼スペースシェアで地域文化を継承する好循環!?
 -地域のお祭りが直面する財政難と担い手不足
 -シェア駐車場で地域のお祭りに愛着が?

▼シェアで推進する社会課題の解決
 -シェア駐車場でCO2削減!?
 -シェアはインターネット時代の分かち合い

郊外でこそ喜ばれるシェアの可能性

伊部
前編で、郊外にシェアが広がっているというお話しをいただきましたが、とある土地活用のご相談があって、もしかしたらシェアで解決が図れるのでは思いました。

西浦
興味があります、どのようなご相談ですか?

伊部
比較的、駅からも近い閑静な住宅街なのですが、第一種住居地域ということもあり商店や飲食店がないという地域の空き地に関するご相談でした。

西浦
キッチンカーやマルシェには合っているかもしれません。

伊部
そうなんです!
住宅街の中に大きな敷地があり、そこに作った駐車場なので、もしかすると活用できるのはないかと思いました。

西浦
近隣の住宅に近接していないならば臭いや音の問題もなさそうですね。

伊部
実は、駅近ながらかなりの坂の上にある場所なので買い物に困っている方が多いと思われます。

郊外の空き駐車場

西浦
コロナ以降、在宅勤務の方も増えていることも影響してか、ウーバーイーツや出前館のような宅配サービスも好調です。近くに飲食店や商店がない住宅街でのキッチンカーや移動販売車などの出店は喜ばれそうですね。

伊部
近くにコンビニもなかったので、地域の方にはかなり喜んでいただけるのではないかと感じます。

西浦
住宅地エリアでも、新たに店舗を建築する訳ではなく、移動型のキッチンカーであれば、融通が利くと思いますご協力しますので、お勧めしてみてください。

伊部
心強いです。確かに考えてみるとキッチンカーを呼ぼうと思いついたとしても、何をどうしたらよいか分からないことに今気づきました。

西浦
地主さんご自身が、キッチンカーを呼ぼうと思っても何を確認して、どう交渉すれば分かりづらいですしご面倒だと思います。そのあたりは、当社のようなマッチングプラットフォームをご利用されるのがよいと思います。

スペースシェアで地域文化を継承する好循環!?

西浦
シェアが郊外に広がっているというお話をしてきましたが、いま当社では地方を含めたお祭りや花火大会、コンサートなどのイベントに絡めたシェア駐車場に力をいれています。

伊部
人気イベントの時、駐車場が予約できればとても便利!

西浦
駐車場を探し回ることもなくなるので道路渋滞の緩和にもなると思います。

伊部
イライラも減って事故も減りそうですね。

西浦
調べたことはありませんでしたが少なからず事故も起こっていると思います。でも、一番の根本的な課題は、お祭りや花火大会の場合、財政難と担い手不足で運営自体がかなり厳しいということなのです。

伊部
開催自体が危ぶまれているということですね。確かに人口流出が起こってしまった地域では人手が減るのみならず、自治体の税収も周辺経済の規模も縮小してしまいます。

西浦
そうなのです。
パンフレットやウチワに企業名を載せて集めていた協賛金があればまだよいほう。自治体が公共駐車場を用意するにも職員や地元の青年会、地域ボランティアでは足りずに交通整理員や警備員などの人件費が必要になる場合もあります。

でも、シェア駐車場の仕組みが活かせれば、まず集金の手間がなくなります。また、予約が前提になるのでキャパ以上のクルマが押し寄せてしまいカオス状態になってしまうようなこともありません。あわせて駐車場の規模にもよりますが利用者はアプリで確認しながら自分で停めるので誘導も必要もありません。

伊部
いいことづくめですね(笑)

西浦
ありがとうございます(笑)
しかも、例えば企業の駐車場や地主の方がお持ちの空き地など、これまでお祭りの際に閉鎖して使われていなかった場所をシェアいただければ、何の設備投資も人件費も不要で受け入れられる台数を増やすことが可能です。

伊部
これは、個人が使わなくなった駐車場やちょっとした空きスペースでも同じですか?

西浦
はい。これまでお祭りや花火大会を渋滞や無断駐車が起きるからと嫌がっていた方々も、ご自宅や店舗前のちょっとした場所を駐車場として貸すだけでお金が入ってくると、むしろ地域の活動に前向きになるようなことも起きているようです。

軒先株式会社「説明資料」より

伊部
イヤだったお祭りが、自分事になっておもてなしの心が芽生えてくる。

西浦
ちなみに駐車料金のお話をしておきますと、かなり大規模な花火大会での例ですが1台あたり平均が8千円、会場から近い場所では2~3万円というところもありました。

伊部
嬉しい臨時収入ですね。

西浦
今年が3年目の実施となったのですが、コロナ明けということもあり、昨年の2倍の価格を設定された方もいらっしゃいました。

伊部
それでも予約が入るのでしょうか?

西浦
便利な場所は公開すると即予約がはいる感じで完売でした。立地を問わず総じて値上げされている方が多かったですね。

伊部
利便性がよければ高くても利用するし、一度便利さを味あってしまうと翌年も……となる。

西浦
お祭りで便利さだと感じていただいた方々が、日常でもシェア駐車場を普段づかいしてくださるキッカケにもなっています。

伊部
お祭りやイベントでご利用者のすそ野が広がっていくのですね。

西浦
はい。
そんなに大規模なイベントは近くでやっていないからご自分には関係ないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、意外な需要がある場合があるので気をつけておく必要があります。当社のシステムでは、地域名や施設名でシェア駐車場が探せるようになっているのですが、急に正直にいうと見たこともないような地名が突然、検索ワード上位にあがってくることがあります。

伊部
そこで、何かしらのイベントが開催される?

西浦
そうです。
調べてみるとちょっとした催し物が開催されているけど、専用駐車場が狭かったり周辺にコインパーキングもなかったりという場合がほとんどです。

あと、お祭りの話からは外れますが「○○市○○小学校」というような感じで探されている方もいらっしゃいます。

伊部
それはかなりピンポイントな需要のスキマですね(笑)

西浦
(笑) 恐らくお子さんが小学校に通われている親御さんが検索なさったのだと思いますが、期間が限定されているとはいえ切実かつ確実な需要だと思われます。

伊部
シェア駐車場を登録したらスグに予約が入りそうですね。しかも小学校がある限り、お調べになった方以外の需要もあるかもしれません。

西浦
どのような場所でも自分では気づけない可能性があるといっていいのではないでしょうか(笑)

シェアで推進する社会課題の解決

伊部
都心部のシェアからスタートして、郊外へとその需要が広がって、今は地方のお祭りやイベントでのシェア駐車場の提供にも取り組まれているというお話しを伺ってきましたが、今後の活動についてお聞かせください。

西浦
スペースをシェアするという事業活動を通して社会課題の解決が図れればと考えています。例えば、地方のお祭り財政難と担い手が不足しているというお話しをさせていただきましたが、これは地域の伝統が継承されないという社会課題と繋がっています。背景には、都市部への人口集中や過疎化、高齢化というもっと大きな社会課題があります。大風呂敷を広げていると思われてしまうかもしれませんが、この辺りことを地方自治体の方々と協力して進めていきたいと考えています。

伊部
最後に、不動産オーナーや地主の方に向けてひとことお願いします。

西浦
不動産オーナーや地主さんには地元に愛着がある方が多く商工会や民生委員、消防団の活動などに関わっていらっしゃるイメージがあります。

シェアエコノミーなどという横文字にしてしまうと、とっつきにくいかもしれませんが、要するにこれは日本に昔からある分かち合いです。これがインターネットとスマートフォンの普及によって、顔の知らない誰かとの分かち合いになりましたが本質は変わらないと思っています。

お使いになっていない土地、いついつまでなら使ってよい、この時間帯は空いているというような場所があって、そこを使いたいという人が現れたら、是非、耳を傾けていただきたいと思います。当社もシステム面ではお役に立てるはずです。

あと、シェア駐車場を提供するだけでもクルマがグルグル走り回って無駄に燃料を消費することがなくなるのでCO2削減に繋がっているという事例もよくお話ししています。

伊部
いきなり大掛かりである必要はないということですね。

西浦
月極駐車場の空車区画をシェアするだけでも立派な地域貢献であり社会課題の解決に繋がっています。

伊部
確かに!駐車場の空車を見る目が変わりました。 早速、お客様にご案内してみたいと思います。 本日はありがとうございました。

西浦
こちらこそ、ありがとうございました。

《終了》

軒先株式会社 西浦明子
株式会社ハウスメイトマネジメント 伊部尚子

前編では、【シェアがもたらす新たな不動産の利活用方】をテーマに対談していいます。