対談インタビュー

シェアがもたらす新たな不動産の利活用方法

不動産活用ネットワークは、不動産オーナー様が直面している課題に対して最短最適な解決策を提供するため、企業の垣根を越えて協力し合うことを目的とした不動産業のプロ集団です。 この『対談』では、毎回テーマを決めて、日々オーナー様から寄せられる「お悩み」や「お困りごと」に対し、【専門家による多角的な視点での解決策】をお伝えしていきます。

いまや当たり前となったシェアサービスの波は不動産の世界にもきています。今回は、不動産の使われていないスキマを見つけ、それを利用したい人とのマッチングする【スキマハンター】との異名をもつ軒先株式会社の西浦明子と、管理会社の立場で不動産オーナーから不動産の更なる利活用などに関する課題に日々向きあっている株式会社ハウスメイトマネジメントの伊部尚子が対談しました。

内 容

▼未活用の空いたスペースをシェアするという考え方
 -キッチンカーの流行とスペースシェア
 -キッチンカーとスペースシェアは郊外へ

▼シェア駐車場という新たな不動産ビジネス
 -駐車場も予約が当たり前!?
 -少スペースで短期でも叶う不動産収入

▼シェアビジネスの視点で不動産をみる
 -ますます増えるシェア駐車場
 -不動産のスキマを探して見つける

未活用の空いたスペースをシェアするという考え方

伊部
世の中では様々なシェアサービスが利用されるようになりました。今回は、いち早く不動産のスキマをシェアするサービスに着手された西浦さんに、新たな不動産の利活用の可能性などについてお話を伺えればと思います。

西浦
よろしくお願いします。まず、ご存じない方もいらっしゃると思うので事業紹介をさせていただきます。ひとことで申し上げると当社は「スペースシェアのマッチングサービス」を提供している会社です。通常の不動産会社では取り扱わないような犬走りといわれるような狭い場所、階段下などのいわゆるデッドスペースのマッチングを2008年に個人で始めて2009年に軒先株式会社として法人化いたしました。

【犬走り:イヌハシリ】
建物の周囲の外構部に作る「犬が通れるくらい」の細い長い空き地のこと。

軒先株式会社「説明資料」より

伊部
いまは、シェアが当たり前の時代になりましたね。

西浦
カーシェアや自転車のシェア、スキルのシェア、洋服やお金のシェアみたいなサービスも出てきています。けれども、創業当時「不動産の使われていない部分を一時的に貸し出すサービス」なんて絶対にうまくいかないといわれていました。

伊部
それが、今では場所のシェアも当たり前になってきている。

西浦
当社では、軒先ビジネスのブランドでサービス提供をしていますが、キッチンカーが停まっている場所も多くがシェアされている場所です。

伊部
確かに色々なところでキッチンカーを多く見かけるようになりました。

西浦
出店コストが低いことから脱サラ組やコロナで人の出が減ってしまい経営が厳しくなった飲食店が新店舗の代わりに参入してきたこと、オフィスビルのランチ難民の解消、商業施設でも空きスペースの収益化とイベント的な賑わいが生まれることなどが評価されたことの影響が大きかったと思います。
キッチンカーをとりまく最近の状況についてもう少しお話しすると、都心部では人通りの多い場所同士が立地の良さで競いあっているという状態になっています。また、キッチンカー自体も数が増えることにより競争が激しくなっていくのではないかと感じています。

伊部
飽和状態になっていくということでしょうか?

西浦
都心部はそうなるかもしれません。ただ、お客様のいるところに移動できるというキッチンカーの強みを活かして郊外へと販路が広がっていくのではないかと考えています。

伊部
郊外の不動産オーナーのところにもキッチンカーが来てくれるチャンスがある!?

西浦
はい!
マンションにある来客用の駐車スペースなどにキッチンカーを呼べれば、収益を生んでくれる可能性がでてきます。

伊部
郊外というと焼イモ屋さんとお豆腐屋さんと屋台のラーメン屋さんというイメージしかありませんでしたが(笑)

西浦
(笑)
キッチンカーを含めて場所のシェアが都心部から郊外に広がっていくと思います。実際、住宅街のコインパーキングが当たり前の風景になったようにシェア駐車場も増えています。

シェア駐車場という新たな不動産ビジネス

伊部
シェア駐車場のお話しがでましたが、不動産管理会社の立場としては非常に興味があります。

西浦
不動産オーナーの方々は「本当に使ってもらえるの?」と思われるかもしれませんが、特にスマホの予約でポチッ!みたいな若い世代の方には全く抵抗感なくご利用いただいています。

伊部
確かに予約ができるのは便利ですね。駐車場をグルグル探しまわることがなくなるのは嬉しいです。当社で管理している物件の駐車場で空いてしまっているところがありますが、ニーズがあるかどうか、ちょっと試してみることもできますか?

西浦
ご登録は無料でランニングコストもかかりませんから、まずはトライしてみては如何でしょうか。ご利用者は会員登録をしていただいているのでご連絡先を含めて身元が全て分かっています。何かあっても対処は可能ですし、これまで変なトラブルはありません。
また、駐車料金のお支払いも事前のオンライン決済ですので回収モレも集金の手間もありません。収益はシステム利用料を除いた成功報酬でオーナーにお支払いします。しかも、ダメだなと思ったらスグに止めてしまうことも可能です。

軒先株式会社「説明資料」より

伊部
お断りする理由がありませんね(笑)

西浦
登録がご面倒ならお電話いただければ代行できる体制が整っているので、是非ご案内してみてください(笑)

伊部
それならご高齢の不動産オーナーでも安心です。

西浦
今現在、駐車場として貸し出していない空き地でも、雨が降ってぬかるんでしまうようなことがなければご登録可能です。3ヶ月後に工事が始まるというような場所の短期登録も可能です。

伊部
売却予定の土地でも大丈夫ですね。

西浦
土地が売れるまでの期間で収益を上げられる可能性があります。

シェアビジネスの視点で不動産をみる

伊部
場所のシェアというと都心部や駅前の商店街というイメージがありましたが、お話しを聞いてだいぶ印象が変わりました。郊外の不動産オーナーや地主さんにもチャンスがありそうですね。

西浦
シェア駐車場は若い世代の利用が多いというお話をしましたが、クルマと同じ移動手段である飛行機や新幹線の場合は予約が当たり前です。恐らく一度でも駐車場を予約する便利さを感じて使い慣れてしまえば抵抗感はなくなると思っています。

伊部
確かに、昔は映画館に行って、混んでいたらチケット売り場に並んだり、時間を変更したりするのが普通でしたが、今は予約が当たり前ですよね。となると、ますますシェア駐車場は増えていくことになりますね。

西浦
そうです。あと、立地と土地の広さによりますがキッチンカーが呼べれば、駐車料金よりも多い収益が期待できるかもしれません。立体駐車場の屋上部でキッチンカーが集まるイベントなども面白いと思います。
最近は、郊外でのマルシェみたいなイベントも流行っています。ちょっと見方を変えるだけで、実は色々なチャンスがあると思います。

伊部
流石、スキマハンター(笑)

西浦
半分冗談ですが「お金が落ちているように見える」とよく言っています(笑)
ご自分の土地や建物でもこれまで気にも留めなかったところから収益が生まれる可能性があります。ですので、是非、皆さんもスキマハンターになっていただきたいと思います。

伊部
不動産業界が長くなると、どうしても契約書を取り交わして……みたいな感覚がどうしてもしみついてしまっていています。勝手にシェアという考え方が遠いものと思っていたかもしれません。私もスキマハンターに弟子入りさせて頂きます!

西浦
シェアリングビジネスの世界でも、事前にシェア駐車場のご利用者が会員登録をいただいているのと同様、キッチンカー出店者からは営業許可証や生産物賠償責任保険(PL保険)などの提出など契約面はキッチリ行っています。いざ利用しようと思ったときにスマホで簡単かつ便利にご利用いただくのがシェアの利点ですので、上手に安心してご活用いただければと思います。
また、不動産オーナーの方には、ご利用者は不特定多数ではなく特定多数であるということをよくお伝えしています。キッチンカーが来てゴミを放置されたりしないのかなどの心配をされるオーナーもいらっしゃいますが、借りる側はプロであって次に使えなくなってしまったら自分が困るだけなので、本当にキレイに使って掃除もしてくださっています。

伊部
それは安心ですね。早速、私もスキマハンターの視点で管理させていただいてる物件を見直したいと思います(笑)

西浦
(笑)

軒先株式会社 西浦明子
株式会社ハウスメイトマネジメント 伊部尚子

~ 後編に続く ~

※前後編の2回にわけてお届けしています。後編は、
【不動産のシェアで実現する社会課題の解決とは?】をお送りします。