対談インタビュー

相続に絡む不動産と株式投資の問題点をプロが解決

不動産活用ネットワークは、不動産オーナー様が直面している課題に対して最短最適な解決策を提供するため、企業の垣根を越えて協力し合うことを目的とした不動産業のプロ集団です。 この『対談』では、毎回テーマを決めて、日々オーナー様から寄せられる「お悩み」や「お困りごと」に対し、【専門家による多角的な視点での解決策】をお伝えしていきます。

大家さん本人には当たり前でも、ご家族には未知ともいえる株式投資の世界

インターネット、さらにスマートフォンの登場で大きく変化してきた世の中の流れは、不動産業界、そして証券業界にも押し寄せてきています。今回は、証券会社でありながら社会貢献を視野に金融サービスにとどまらない幅広い活動をするアイザワ証券株式会社の金丸和樹と、日々、管理会社の立場で不動産オーナーの課題に向きあっている株式会社ハウスメイトマネジメントの伊部尚子が、相続にまつわる課題やその具体的活用方法などについて対談しました。

伊部
私は、不動産管理会社のなかで、相続に関する相談もうける部署にいますが、ご相談者である賃貸物件オーナーは結構な確率で株取引もされているという感覚があります。

金丸
証券会社からみると、多くの株式を保有している方は、不動産もお持ちという方が多い?(笑)

伊部
不動産オーナーからみると、収益物件も証券も同じ投資。それをどちら側から見るかの違いだけ(笑)

金丸
(笑)

伊部
普段相続の相談を受けるときの実務として不動産の名寄せ、銀行口座の把握、借り入れの有無、生命保険の内容、証券口座と保有銘柄の確認も行っています。けれども自分自身もそうですが、周りのスタッフも投資信託くらいは持っていても、株取引の経験があまりない。

遺言書の作成についてアドバイスを求められても株式の部分は自信をもって答えられません。「詳しくは、証券会社さんに相談してください」みたいになってしまっています。

金丸
弊社では全てのお客様に価値あるソリューションサービスを提供することを目指しており、証券のみならず不動産も含めた包括的なアドバイスをしています。

伊部
私自身、フドカツでアイザワ証券さんと知り合う前まで、証券会社に知人はいませんでした。これは、大家さんの奥様やお子さん方の場合も、あまり変わりがなくて、実際に「株はわからないから現金がいい」などという声がよくあります。

金丸
特に年配の女性の場合、いまだに「株は怖い…」というイメージを持たれている方もいらっしゃいますね。

実際にあった「遺言書」相談~公平性のお話

伊部
先日、実際に「X電力会社」「Y通信会社」「Zファストフードチェーン」などの株をお持ちのオーナーで、お子さんが2人。ご家族の関係も非常によいんですが、その仲のよさもあって「きっちり平等に分けたいんだ」というご相談がありました。不動産の名義変更とは違って、証券会社の口座は引き継げないと聞いたことがあるのですが、本当ですか?

金丸
はい。ご本人以外、口座内の株式や現金を動かすことはできませんし、名義変更して引き継ぐということもできません。

伊部
預貯金口座や不動産は相続人に名義変更できますからから、そこは違うのですね。具体的には、相続になった場合、どのような手続きが必要になりますか?

金丸
引き継がれる方が、証券口座をお持ちでなければ開設していただいてから株式を移管。お持ちであれば、その口座に移管します。

伊部
それは、証券会社が違っても大丈夫ですか?
異なる会社間で横断的に対応してくれるものなんでしょうか。

金丸
弊社の場合、他社への移管も行っています。ただ、証券会社によって対応が違う可能性があるので、特にこだわりがなければ、同じ証券会社に口座を開設するのがよいのではないでしょうか。

伊部
アイザワ証券さんは親切なんですね!

金丸
お客様のご希望にできる限り叶えて差し上げたいと常に考えております(笑)

伊部
株式の保有も取引もイヤだから現金にして欲しいという場合はどうなりますか?

金丸
所定の手続きを経れば株式を売却して現金化することもできます!

伊部
ご本人は亡くなっているからそのままでは売却できず、奥様やお子さんが、一旦ご自身の証券口座を開設。その口座から株式を売却して現金化する必要があるのですね。

金丸
そうです。

伊部
あと、取引単位100株という銘柄で500株保有されている銘柄があったんですが、250株ずつ分けることも可能なんでしょうか?

金丸
結論としては、可能ですが、あまりお勧めしません。というのは取引単位に満たない50株は端株(はかぶ)といいますが、簡単にいうと取引方法に制限があって、売却が不便になります。

伊部
でも、300株と200株に分けるときっちり半分ではなくなっちゃう。

金丸
これは、どこまで平等性を重視するかという問題なので、難しいところなんですが、現実的には、その差を現預金で調整するケースもあります。

伊部
そうなのですね。遺言書を作成したときは、ほぼ平等だったとしても、相続が発生したときにある銘柄が暴落していて差が大きくなってしまうこともあり得る。

金丸
それは、あり得ますが、逆もあり得ます。そこも難しいところです。株式の場合、現金と違って、亡くなった日や相続税の評価日などどこか期日を決めて、その価値を確定させる必要があります。

伊部
遺言書で、長男は不動産、次男は現金、長女は株式とバランスよく決めたとしても、不動産は老朽化するし、株式は価格が変動するしきっちり平等は現実的に難しい。そこで評価のバランスが崩れたからといって分割協議をしたら遺言書の意味がなくなっちゃいますね。相続人の一人の意思能力が無くなっていたらそもそも遺産分割協議ができないですし、遺言書をきちんとしておきたいですね。

金丸
遺言書に株式を記載するときの注意点として、株式統合や株式分割といって株数が変わることもあります。

伊部
株数で遺言書を作ったら、足りなかったり、多かったり!?

金丸
特に株式投資に売買益を求められている場合は、遺言書を作成された後に、相続させるはずの株を売却する可能性もあります。

伊部
相続の手続きをしようと思ったら、その株がないなんてこともあるのですね?

金丸
不動産の世界も同じですが、厳密性や公平性を求めるにも課題や限界があります。
不動産を相続した方も相続税の納付は現金ですから現金も相続しないと困りますね。
証券なら売却して支払えば良いわけですが。

伊部
他にも注意することはありますか?

金丸
ちょっとマニアックになりますが、最近は株主優待を目的に株をお持ちの方もいらっしゃるので、そこを絡めてのお話がわかりやすいと思います。

伊部
聞いたことあります、食事券やお米が届く!?

金丸
そうです。例えばある銘柄の場合、500株の保有で優待券が5冊届きます。 100~299株は1冊、300~499株は3冊、500株以上は5冊となっています。

伊部
つまり、250株に分けると端株で売買が面倒になったうえ、299株以下だから優待券も1冊ずつになって2冊しかもらえない。結果3冊分が減る。

金丸
まあ、あくまでも分かりやすさを優先した例としてのご説明ですから、大家さんがそれを気にされているかどうかわかりませんが、そういうことになります。

伊部
300株と200株に分けても4冊になって1冊減ってしまい損する。しかも、300株をひきついだ方は、優待券が1冊多いという不公平(笑)

金丸
食べ物の恨みは怖い……というのは冗談ですが、配当のある銘柄でしたら、そこにも差が出てきます。

伊部
具体的な、対策はないのでしょうか?

金丸
株式での運用から投資信託の運用に切り替えていただくという方法があります。そうすると1口単位ですので、分けやすくなります。

伊部
投資信託いいですね!

金丸
けれども、株式投資という楽しみを奪ってしまう恐れもありますし、お孫さんと一緒に優待券でお食事が楽しみだったのに……という可能性もあったりします。

伊部
ちょっと、永遠に終わらない気がしてきました(笑)

金丸
まあ、仲のよいご家族であれば、あとは、片目をつぶっておおらかなお気持ちで分かち合っていただく……というのが結論ですね。

伊部
最終的には、不動産の世界と一緒。
でも、収益物件以外で、株式があった場合の具体的な注意点について、よくわかりました。

アイザワ証券株式会社 金丸和樹
株式会社ハウスメイトマネジメント 伊部尚子

~ 後編に続く ~

※前後編の2回にわけてお届けしています。後編は、地主さんの視点での
【株式投資の長所を活かした相続テクとすべきこと】をお送りします。