対談インタビュー

『底地を活用するための疑問&質問と解決策』

不動産活用ネットワークは、不動産オーナー様が直面している課題に対して最短最適な解決策を提供するため、企業の垣根を越えて協力し合うことを目的とした不動産業のプロ集団です。 この『リレー対談』では、毎回テーマを決めて、日々オーナー様から寄せられる「お悩み」や「お困りごと」に対し、【専門家による多角的な視点での解決策】をお伝えしていきます。

底地に関する地主さんのお悩み

インターネット、さらにスマートフォンの登場で大きく変化してきた世の中の流れは、不動産業界にも押し寄せてきています。今回は、底地の管理事業と買取事業を中心に活躍する株式会社サンセイランディックの村木彩と、日々、管理会社の立場で不動産オーナーの課題に向きあっている株式会社ハウスメイトマネジメントの伊部尚子が、底地にまつわる課題やその具体的活用方法などについて対談しました。

前編は、【高齢化社会・核家族化で深まる借地契約の問題解決!】をテーマに、社会環境の変化などによる、底地・借地契約をめぐる問題点や課題、そして、その解決の糸口となる考え方や方策についての対談をお届けしました。
まだ、前編をご覧になっていない方は ⇒ コチラ

伊部
後編では、管理会社の立場で、日々地主さんのお悩みに触れる立ち位置から、底地活用にまつわる疑問点・具体的な質問について、お聞きしたいと思います。

村木
よろしくお願いします。

伊部
まず、底地の話を聞くようになって「地代が安すぎるのではないか」という地主さんの声をよく耳にします。そこで、地代の算出基準について、教えていただいたいと思います。

村木
賃貸物件ですとインターネット上に賃貸物件の情報が多く開示されています。賃料も開示されてますので、相場観は把握することができると思います。前編で、住宅地で固定資産税の3~5倍、商業地で5~8倍という地代相場をお伝えしましたが、これは法律で決められた内容でもなく不動産業者が決めた内容でもありません。地代額について裁判を起こされ裁判所が出した判決をもとに作り出された基準と考えられています。そのため、地代の場合は相場という価格が明確になりにくいのが現状です。

よって普段、仲介や売買を専門としている不動産屋さんに聞いても、地代の相場について明確な回答を得ることは難しいと思います。だからといって、分からないままに大昔に決めた地代を徴収して、税金を支払ったら赤字だったというのでは目も当てられません。

もちろん、法外な地代を設定することは借地権者さんとの関係性に支障をきたす可能性がありますので、お勧めしません。しかし地主さんもボランティアではありません。しっかり収益を上げるためにも、地域の借地事情に詳しい不動産さんを探して相談することをお勧めします。

伊部
まずは、プロに相談ですね。

村木
そうです。あとは地代の件以外に、所有されている底地をどうされるのかもきちんと考えていただきたいなと思います。というのも弊社では底地事業をメインに扱っているので、底地のご相談事を多くいただくのですが、「交渉済み」の底地については、買取などのご希望に添えないケースがあります。

伊部
「交渉済み」の底地とはどういう意味ですか?

村木
底地は、土地を持っているのに使えない、そして地代は安いのに税金はしっかりかかるし、流動性は低いという負の不動産の代表格です。そのため、地主さんとしては何とかされたいと考えられ、借地権者さんに「底地の購入をしてもらう」もしくは「借地権を売却(返還)してもらう」交渉をされ、権利の統合を試されるケースがあります。

悪いことではないのですが、交渉したけれど断られて、底地の購入も借地権の売却(返還)もどちらも叶わないこともあります。そのようなことも想定され、交渉されるかどうか考えていただきたいなと思います。

サンセイランディックは、底地をお譲りいただいた後、各借地権者さんにお話しし、所有権化を目指す事業ですので、所有権にならないと判明している底地についてはご希望に添えないという可能性があるのです。
良かれと思って行った交渉が、場合によっては、不動産価値を下げる可能性があり、売れるものも売れなくなってしまう危険性さえあります。

伊部
管理会社として、常に非弁行為には注意していますが、地主さんも含めて安易に交渉してはいけないんですね。断られたことがマイナスに働くことがあるとは知りませんでした。

村木
そうですね。あとは、不動産は単純ではないので……そもそもそのために宅地建物取引士という士業があるわけですから、頼っていただきたいなと思います。

伊部
底地借地ですと更新料の支払いなんかもよく質問をいただき頂きます。

村木
インターネットで借地の更新料について調べると、支払いの必要はないというような解説文もあります。法的には支払う義務はないですが、契約書に更新料の支払いについて明確な記載があればこの限りではありません。しかし、更新料の支払いについて記載されていない契約書も少なくなく、これを根拠に更新料の支払いを拒む世代交代された借地権者さんが増えてきたように思います。

伊部
顔見知りでもないし、時代的にも権利思考が強まっている影響ですね。

村木
払わなくてよいなら払わないという考え方を否定はしません。けれども、いざ建て替えや借地権を売却したいと思ったときは、地主さんの許可が必要になることを忘れてはいけません。

村木
地主さんも人間ですから、気持ちよく対応してくれた人には気持ちよく、そうでない人には意地悪な気持ちが出てしまってもおかしくない(笑)

伊部
(笑)地主さんが底地を所有され続けるには、地代だけでは不足していると考えます。実際は更新料などで補われている場合が大半だと思います。そのため、借地権者さんの方も、後に繋がる子供世代のことも考えた「地主さんとの良い関係性の構築」にも気持ちを向けて欲しいと思います。

やっぱり、借地の契約書は作るべき?

伊部
前編で、借地は口約束が珍しくないというお話をしましたが、やはり契約書は必要ですか?

村木
進め方に注意が必要ですが、作成することをお勧めしています。あとは、契約書は作成されているけれど、借地権者さんの更新期などの管理が煩雑で、せっかく契約書に更新料のことが明記してあるにも関わらず、手続きを忘れてしまって受領し損ねてしまったなんていうお話もよく聞きます。底地は、借地権者さんごとに契約面積、契約期間や地代などが異なりますから、賃貸管理とはまた違った大変さがあります。

伊部
Excel世代になると、表で管理して…みたいなことが当たり前ですが、更新時期の把握はきちんとしておかないと、後からでは更新料を徴収するのは難しくなってしまいますね。

村木
管理ツールも重要ですが、契約書を作成するには、家族関係など込み入った話を聞かなくてはいけないというハードルもあります。借地権者さんが亡くなった際の相続人のなかに連絡が途絶えている方がいたり、内縁の奥様がいらしたりと部外者には、話したくないことも聞かなくてはいけない場面もあります。

伊部
同じようなことは、賃貸物件の相続でもありますが、長い時間が経過してしまっていると、聞き取りするのはなおさら大変そうですね。

村木
伊部さんは、不動産業界にお勤めですから、底地に関する知識や理解がありますが、借地権者さんのなかには、建物登記を変更したら一緒に借地権も引き継がれるものと思い込んでいたり、前編でお話しした通り、自分の住んでいた家が借地だと知らなかったりという方もいます。

伊部
そのためにも、早め早めに人間関係を作りながら、準備を進める必要がある。
以前、地主さんから「借地権者が亡くなったら借地権は戻ってくるのか?」という質問を受けましたが、借地権も相続財産ですから、地主さんに戻ってくるわけではないですよね?

村木
そうです。
少し、不謹慎に聞こえるかもしれませんが、借地権者さんが一人で住まわれていて亡くなられた後、誰も住まなくなるケースもあると思います。ただ相続人の特定は必要で、その方とのお話し合いが必要となります。「借地権を返す」というお話しになれば、その土地に付いていた借地権はなくなりますので、地主さんのみの権利の土地になります。
しかし借地権も相続財産ですから、相続人となられた方は、本来はそのまま借り続けることができますので、もし返してもらいたいという場合には、対価が必要となることも想定したほうがよいと思います。

伊部
自分の土地なのに、返してもらうのにお金がかかるというのもなんだか理不尽ですね。

村木
ご納得いかない気持ちもわかります。貸している土地ですからね。しかし借地権という権利が守られている以上、これは仕方ありません。前向きに考えて、例えば借地権者さんと話し合って、借地権を売ってもらうようなお話になれば、その土地に賃貸物件を建てることが出来るようになります。場合によっては、収益性や流動性も向上することもありますし、なにより管理しやすくなるのではないでしょうか。

伊部
「借地権の買い戻し価格がいくらなら採算があうのか」を考えながら話を進めればよいのですね。

村木
将来的にはそういった話も出てくるかもしれませんので、今の時点で借地権者さんの相続人の把握と、その方の意向の確認をされることも必要なことだと思います。ただし借地権者さんが亡くなられた時のお話しになりますので、相手が嫌な気持ちにならないようお話の仕方については要注意です。

底地の地主さんへのアドバイス

伊部
最後に地主さんへのアドバイスをお願いします。

村木
まず、ご自身の底地の状況――いつからいつまで、誰に、どれくらいの広さを、いくらの地代で貸しているのか? を把握すること。あわせて、その土地が借地以外に活用できる可能性があるのか、子供世代がどうしていきたいのかを、まずはご家族で話しあわれることをお勧めします。

伊部
ご家族の意向を含む現状把握が大切ですね。

村木
現状の把握ができれば、このまま地代をもらい続けるのか、借地権を買い戻して賃貸物件を建てるのか、底地を売却するのかという、今後の方向性が見えてくると思います。
当社では、底地の買取と管理事業を行っています。底地は、負の不動産の代表格であることは、お話しした通りですが、なかなかすぐに売却に踏み切れない不動産でもあります。そのため、一度ご状況をお調べし、所有され続きけて次世代に引き継がれる場合は、「管理事業を通じて改善のお手伝い」を、手放される場合には、「買取のご提案」をさせていただいております。

ちなみに、売却先は借地権者さんと、当社のような底地を扱う不動産会社があります。特に複数の借地権者さんがいる場合は、交渉期間も長くなりますし、交渉がうまくいかず、結果として整理できなかったということにもなりかねません。

伊部
地主さんが、複数の借地権者さんと話をすることは現実的ではありませんから、専門の不動産会社を使うのは納得です。

村木
ご自身で全てやろうとすると、借地権者さんとの話し合いから、業者への測量依頼、士業関係へ相談など、結構な仕事量になります。業務を委託する手数料もかかりますよね。しかし当社のような不動産会社に依頼すれば、手間や精神的負担なく手放すことができることがメリットです。

伊部
時間がかかって、結局、次世代に問題が持ち越しになってしまっては意味がありません。

村木
それと、揉めてしまっては、いいことはひとつもありません。プロに任せられることは任せる。特に借地権者さんとの交渉事は経験豊富な専門家に相談したほうがいいと思います。
また、これは借地権者さんの方にも考えていただきたいことですが、ご自身が関係する不動産の価値を守るためにも人間関係を良好に保ち、多少のお金のことには目をつぶるという感覚が大切かもしれません。

伊部
昔ながらの感覚を大事にしながら、時代に合わせた考え方で対応していく柔軟性が必要というところですね。本日は、ありがとうございました。

村木
こちらこそ、ありがとうございました。

《終了》

株式会社サンセイランディック 村木彩
株式会社ハウスメイトマネジメント 伊部尚子

前編では、【高齢化社会・核家族化で深まる借地契約の問題解決!】をテーマに対談していいます。