不動産活用ネットワークは、不動産オーナーのお困りごとに対して最短最適な解決策を提供するために、企業の垣根を越えて協力し合うことを目的とした不動産業のプロ集団です 。 Q&Aコーナーではオーナー様からのお悩みと専門家による解決方法をご説明いたします。
今回のご相談
不動産M&Aで高い節税効果が望める理由とは?
一般的な不動産取引では売却益に対して法人税等で約30%課税されます。さらにオーナー経営者に株主還元すれば、オーナー経営者に対して配当所得として総合課税が適用されます。累進課税により税額は計算されますが、上記の法人税を控除した残額に最高税率ともなると約55%の所得税等が課されてしまいます。一方で、不動産M&Aでは、不動産を所有する法人の株式を売却したとしても、当該法人が不動産の法的な所有者であり続けるという点は変わらないため、基本的には、当該不動産の含み損益は実現しません。そして、不動産M&Aでは、その目的とする不動産をオーナー経営者が保有する株式という形で売却します。あくまで譲渡対象は株式のため、その株式譲渡益に対して譲渡所得として分離課税の適用を受けますが、その譲渡所得に対する税率は約20%です。そのため単純な不動産取引よりも高い節税効果が望めると言われています。
不動産M&Aで第三者承継によるメリットも
今回のご相談のように、オーナー経営者ご自身がご高齢で、親族・従業員に後継者がいなければ廃業しようと考えるケースは数多くあります。不動産M&Aでは、法人が所有する不動産の取得を目的としながらも、その法人の経営も買い手に引き継いでもらうことができるため、オーナー経営者の後継者問題も一挙に解決することができるのです。外部企業を承継先として経営を引き継いでもらうことができれば、廃業は回避できます。廃業を回避することは、廃業コストの削減にもなりますし、廃業してしまえば失うはずだった従業員の雇用を守ることにもつながります。さらに、買い手に経営を引き継いでもらうことで、資力が乏しくて安定化できなかった経営を買い手の資力で解決することができるようなケースもあります。
不動産M&Aで注意しなくてはならない点とは
高い節税効果や多くのメリットを望める不動産M&Aですが、M&Aで売却することによるデメリットもあります。不動産M&Aでは、基本的に不動産の取得を目的としますが、目的とする不動産以外の資産や負債も引き継ぐことになるため、必要な手間暇が売り手と買い手の双方で増えてしまいます。そのため、一般的な不動産取引よりも売却までに時間が必要になるといわれており、早急に売却を考えている場合には、大きなデメリットとなってしまう可能性があります。また、通常の不動産取引とは違い、不動産M&Aの場合、会社を売却するという情報自体に高い守秘性が求められるため、一般的な不動産取引のように不動産情報をオープンにするのではなく、クローズドで話を進めることが一般的です。そのため、通常の不動産取引より買い手を探すのが難しいという点があげられます。したがって、実際に不動産M&Aでの売却を検討する場合には、買い手候補の探索などを専門とするM&Aのアドバイザーを見つける必要があります。
不動産M&Aにおける買い手のメリット・デメリットは?
不動産M&Aの場合、不動産の法的な所有者が変わらないことから、不動産取得税及び登録免許税の負担が発生しないため、買い手にとってもコスト面でメリットがあります。また、M&Aにより譲渡対象企業そのものを取得することで、譲渡対象企業が持つ、ノウハウ・人材・顧客・取引先などのすべてのリソースを獲得することができます。一方で、デューデリジェンスなどを徹底しないと、簿外債務などの負の資産まで引き継ぐ可能性があるので、買い手側はその点は注意が必要です。また、買い手が連結納税制度を導入している場合には、不動産の含み益に対して課税がされます。さらに将来、当該不動産を売却した場合には、引き継いだ簿価との差額が課税対象額になるため、買い手にデメリットが生じることなることには売り手としても考慮しておくべきでしょう。
不動産M&Aを活用した売却で創業者利潤の最大化を目指す
不動産M&Aは通常の不動産取引と異なり、売り手・買い手の双方にとって、大きな節税効果を発揮する可能性があります。また、M&Aによる第三者承継で後継者問題を解決したり、自社にはないリソースを手っ取り早く取得することが可能です。一方で、買い手は、通常の不動産取引とは異なることから、譲渡対象企業の簿外債務まで引き受けてしまうリスクもありますので、買い手はデューデリジェンスを慎重に行い、売り手は適時適切な情報開示が必要になってきます。このような細かな注意点やリスクは不動産M&Aに限らず、通常のM&Aにおいても多々あります。リスクを抑えるためには個人で行わず、専門家に相談することです。不動産M&Aを行う場合には、「不動産」と「M&A]に精通したアドバイザーに必ず相談するようにしたほうがよいでしょう。