加盟社リレー寄稿Q&A

オンライン内見が増えているって本当ですか?

不動産活用ネットワークは、不動産オーナーのお困りごとに対して最短最適な解決策を提供するために、企業の垣根を越えて協力し合うことを目的とした不動産業のプロ集団です 。 Q&Aコーナーではオーナー様からのお悩みと専門家による解決方法をご説明いたします。

今回のご相談

不動産オーナー
不動産オーナー
物件の現地を見学しないで入居申し込みがあったのですが、仲介担当者に聞くと、オンライン内見をされたとのことです。
オンライン内見とはどうやって行っているのか、実際どのくらい増えているのかなどを知りたいです。
伊部尚子
伊部尚子
新型コロナウイルス感染が拡大した際、不動産会社のお店に来店するお客様が激減しました。
お部屋探しのお客様からは、感染を防ぐために仲介店舗に行きたくない、担当者と車に乗りたくない、内見中も人と接触したくないという要望が挙がるようになりました。
ITが苦手と言われる不動産業界でも思い腰が上がり、オンライン内見を取り入れる会社が増えました。
長引くコロナ禍で定着したオンライン内見について、お伝えします。

現地を見学しないで申し込む人が増えている?!

リクルート住まいカンパニーの実施した「2020年度賃貸契約者動向調査(首都圏)」によると、物件見学をしなかった人の割合は、09年度から増加し、15年度からはおよそ10%で横ばいとなっています。これは、不動産ポータルサイトでの写真の登録枚数が増えたことや、動画を掲載している物件が増えたことに起因すると追われます。
これに加え、コロナ禍で増えたのがオンライン内見です。非対面の案内を希望するお客様のニーズに合わせて、オンライン内見に対応できる体制を整えた仲介業者側も増えました。
同調査によると、オンラインでのみ内見を実施した人は13.5%、現地での内見とオンライン内見を併用した人は6.2%、現地での内見だけの人は70.4%、内見を全くしなかった人は9.9%となっています。
つまり、一度も物件現地を見ていない人は23.4%もいることになります。

オンライン内見により、見学する物件数が増加

同調査によると、オンライン内見の利用は賃貸契約者の約20%となっており、お部屋探しの方法にオンライン内見が浸透しつつあることが分かります。オンラインでのみ内見を実施した人の最高齢は79歳だそうですが、スマートフォンを使用してお子様やお孫さんとのビデオ通話を経験している高齢者にとっては、ハードルが低くなっているのかもしれません。オンライン内見は若い人だけでなく高齢者にとっても便利な方法だと思います。
オンライン内見が増えたことで注目すべき変化は、これまでずっと減り続けていた内見物件数が少し増えたことです。現地で実際に内見した人の内見物件数が2.9件なのに比べ、オンラインでのみ内見を実施した人の内見物件数は3.2件となっています。
オンライン内見の気軽さが、内見物件数を増やしているものと思われます。オーナーにとっては物件を選んでもらえるチャンスが増えることになります。

オンライン内見はどうやってやるのか

オンライン内見の方法は、不動産会社ごとに使っているシステムが異なりますが、物件現地にいる仲介担当者とビデオ通話で繋げて行うのが一般的です。お部屋探しの方にとっては、遠方にお住まいだったり小さなお子様がいて出かけにくい、仕事が忙しく時間が取れないなどの場合にとても便利です。
気になる点を担当者にリアルタイムで質問することが出来るのも便利なところでしょう。写真に写っていない部分も見せてもらうことが出来るので、写真や動画よりも多くの情報を得ることができます。必要な部分のサイズをその場で測ってもらうこともできるでしょう。
仲介する側にとっても、画面越しにお客様の顔を見て話しをすることができるため、営業力を発揮できますし、そのまま申し込みになった場合でも、どんな人なのか全く分からないよりは、オーナー側にも安心感があると思います。

オンライン内見の場合に注意したい点とは?

オンライン内見のみの場合、周辺環境が分かりにくいというデメリットがあります。
引っ越し後の入居者から、思ったより車の音がうるさい、飲食店の排気の匂いが流れてくる、砂埃が多く窓を開けられない、日当たりが良くないなどと言われてしまうと管理会社もオーナーも困ってしまいます。
入居後のトラブルを避けるため、仲介担当者も現地案内の時に細かく要望を聞き出す、後々問題になりそうな部分はあらかじめ伝えるなどの工夫をしています。
不動産業界には古くから「現況有姿」(今の状態のままという意味)という言葉があり、法的には議論はあれど、その言葉の根底には「現地を内見して決めたのだから、承知の上で借りたはず(だから後から文句を言わないでね)」という考え方があると思います。しかしオンライン内見ではそもそも現地を実際に見ていないのですから、対応する不動産業者もこれまで以上に注意が必要なのです。

法改正で賃貸業界のデジタル化が進んでいる

令和4年5月18日にデジタル改革関連法が施行され、借地借家法も一部改正となり、契約書等の押印廃止や、
電磁契約を認める内容が盛り込まれています。賃貸業界もデジタル化が進み、オンライン契約などが一般的になっていくでしょう。
その流れに伴い、オンライン内見もますます増えていくことが予測されます。オーナー様にとっても、入居申込があった際に、「今回は現地内見?オンライン内見?」などと仲介担当者と会話するのが当たり前の時代が、すぐそこまで来ています。

 

 

ABOUT ME
伊部尚子
伊部尚子
株式会社ハウスメイトマネジメント ソリューション事業本部 課長 賃貸不動産に関わって20年余り。仲介営業、仲介店の店長、管理の現場担当者、管理支店の同社女性初の支店長を経て、現在は金融機関や業界団体等での講演の傍ら、賃貸住宅の企画や収益改善の相談を受ける。上級相続支援コンサルタント、CFP(日本FP協会会員) 、1級ファイナンシャルプランニング技能士 、公認 不動産コンサルティングマスター、DIYアドバイザー