不動産活用ネットワークは、不動産オーナーのお困りごとに対して最短最適な解決策を提供するために、企業の垣根を越えて協力し合うことを目的とした不動産業のプロ集団です 。 Q&Aコーナーではオーナー様からのお悩みと専門家による解決方法をご説明いたします。
今回のご相談
費用の分担や消毒の作業方法を決めないとどうなるか?
知り合いのビルオーナーが、コロナウイルスの感染者が発生した際にビル側として対応した事例をご紹介いたします。ビルとしてはテナント側で感染者が発生した場合は、ビルの管理者宛に一報する旨の周知がなされていましたが、発生した後の消毒費用の分担や実施の方法までは規定されておりませんでした。ビル側としては、消毒専門業者を手配し、専有部・共用部共同一の業者実施し、費用については専有部はテナント負担、共用部はオーナー負担として分担負担する想定でしたが、テナント曰く「保健所に指導を仰いだが、次亜塩素酸ナトリウム溶液か、一定濃度以上のアルコールで清拭すれば良いと言われた。業者に頼むとお金がかかるし、ウチはウチで実施するから、オーナーさんはオーナーさんで清掃を実施してください。」と一蹴されました。ビルオーナーが自分のビルで起きているコロナ対応の実態を把握できないのは、管理上・安全衛生上のリスクが高まるとみなしてよいでしょう。
ビル側のルールはどのように決めていけばよいか?
いよいよ、ビル側でコロナ陽性者発生時の対応を一定の質を保ちながら管理をしていくために「ルール」を設定することになります。「館内規則」の中にコロナウイルス対応の対応フローと実施に関する細則を追記し、各テナントに配布することで、ルールの周知徹底を図りましょう。一般的な賃貸借契約では、条文の中に館内規則の遵守徹底が約定されています。つまり、館内規則を守ることが、ビルオーナー・テナント間で賃貸借契約上の約束を守ることと同義という解釈になるのです。
館内規則にはどの様に記載するか(その1)
それでは館内規則への記載方法について、説明します。「1.対応フロー」と「2.業者の選定、実施方法に関するルール」、そして「3.費用分担の取り決め」といった構成で記載していただくことを提案します。
「1.対応フロー」では、発生時に誰がどこに連絡を取るか、次にその連絡の際に関係者に伝達、共有すべき情報を明確にしておく必要があります。
まず、【テナントからコロナ陽性者発生時のヒアリング内容(例)】
①陽性者の最終出社日
②陽性者の発症日
③陽性者の濃厚接触者の有無
④コロナ陽性者発生に伴う社内(テナントの社内)運営体制等の確認
以上を管理会社が把握し、発生者以外のビル関係者にどのように周知するか、なお、その際に感染者のプライベートに関する情報、感染者個人が特定されるような情報を漏洩しないよう、伝達すべき範囲と方法には十分注意が必要です。
館内規則にはどの様に記載するか(その2)
次に「2.清掃業者の選定、実施方法に関するルール」ですが、大別して次の二つの方法のいずれかで規定することを提案します。一つ目は、実績十分な消毒業者をあらかじめ指定業者として、一社もしくは数社程度ピックアップし、消毒を実施する場合は必ずその指定業者にて実施する方法、二つ目の手法としては、信頼、実績のある消毒業者に作業時の着衣、作業方法などのガイドラインを策定してもらい、どの様な業者が実施する場合であっても、一定水準の作業を実施することをあらかじめ約束させる方法です。業者の質、作業の質、いずれかの基準を明確にし、常に一定水準での清掃作業を可能にするのです。
そして、「3.費用分担の取り決め」です。基本的な費用分担として専有部はテナント負担、共用部はオーナー負担、という理解になりますが、コロナ陽性者がテナント側か、ビルオーナー若しくはビルの管理者側かという発生源で費用負担をどちらか一方に決めてしまうという形でも良いと考えます。共用部での消毒作業を一律オーナー負担としている場合、仮に何度もテナントから感染者が発生した場合は、その都度オーナーは一定の費用を負担しなければいけないことになるからです。
快適なオフィス環境を維持するために
今回、ビル内でコロナ陽性者が発生した場合の対応をお話しさせていただきましたが、ビルの快適な環境を維持するためには、発生を未然に防ぐ事前の予防措置についても配慮を怠らないようにしましょう。たとえば共用部の換気量を多くする、ビル内の各所に消毒用アルコールの設置をすることは勿論、自動水栓等の非接触設備の導入やジェットタオルの停止、ペーパータオルの設置、エレベーターの利用人数制限なども検討するべき課題です。
また、今回のコロナ発生をきっかけにオフィスの在り方そのものが見直されたり、コロナ感染が沈静化した後に、ビル運営としてどのような方策を取っていくかという事も、今の段階から情報収集していくことも非常に重要です。