不動産活用ネットワークは、不動産オーナーのお困りごとに対して最短最適な解決策を提供するために、企業の垣根を越えて協力し合うことを目的とした不動産業のプロ集団です 。 Q&Aコーナーではオーナー様からのお悩みと専門家による解決方法をご説明いたします。
今回のご相談
ABWを導入した場合の働き方
皆様も一日の中でさまざまな活動形態で仕事をこなしていると思います。プレゼン資料の作成のように集中して作業を行いたいときは個室で仕事、新しい企画でアイデア出しを伴う場合は、カフェでコーヒーを飲みながらじっくり考えることも可能ですし、Web会議に参加するのであれば、防音の効いたブース席を使うかもしれません。ABWではワーカーそれぞれにとって最適な環境を選ぶことで、仕事の効率を高めることができるわけです。ただし、このABWのワークスタイルが自社の職種に適しているか、そうでないかは見極める必要があります。ABWは場所やシチュエーションを転々と変化させるワークスタイルなので、営業職や企画職など、基本的には出入りや移動、外部との接点の多い職種に適していると言われています。
ABWの適正を判断、まずは働き方の調査を!
ABWは適している職種とそうでない職種があることについて触れました。自社でABW導入を検討する場合は、事前に自社内でオフィスの働き方調査をまず実施するべきでしょう。営業職・企画職・事務職・技術職などの人員構成、会議室の使用状況や適性な広さ、在席率の高い部署、そうでない部署、ポータブルのPCで仕事ができるのか、あるいは研究や開発型の職種で据置型のPCがどうしても必要か等々、部署・職種ごとにABW導入に際しての障壁の有無、あるいはABWの導入によりどれだけ業務が改善されるかの想定と事前検証が充分に必要です。
さらにABWはそれぞれの仕事の目的や内容に合わせて職場環境を自分で選んでいくため、自主的に仕事を組み立てる能力のある、経験値が豊富なワーカーに適していると言われる一方で、研修中の新入社員や限定された職務を遂行している契約社員・派遣社員など、経験値、働き方のバリエーションが伴わないワーカーまでABWの職場環境に順応させるためには、一定の配慮をもってABWの導入を検討しなくてはならないでしょう。
ABW導入オフィスのメリット
ABWは元々オランダの企業Veldhoen + Company発祥のワークスタイルで、主にグローバル企業を中心に採用する事例が増えてまいりました。冒頭にABWを「仕事内容に合わせて働く場所を自由に選べる働き方」とご紹介いたしましたが、Veldhoen社によるとABWは企業の事業目的達成に寄与するための働き方の一つに過ぎないと定義しており、働き方の体現のみならず、企業の目的達成のための手段、即ち効果が発揮されなければ意味がないということを強調しています。
ABW導入のメリットとしては、働き方の自由度向上による生産性の向上、優秀な人材の確保および離職率の低下、オフィス面積の削減、たとえば育児中のワーカーは在宅勤務を選び、家族の状況に合わせて都合のよい時間に仕事を進めたりと、自由な働き方ができるので、ワークライフバランスも実現しやすくなるというメリットが挙げられます。
ABW導入オフィスのデメリット
ABWを導入した結果、大きな効果が発揮される一方でデメリットもいくつか考えられます。たとえば、働く場所や勤怠時間が統一されなくなることで、部署間や従業員間のコミュニケーションの機会が減る可能性や、一部のみに偏るケースも想定されます。特にチームの中でのコミュニケーションが不足すると、認識にズレが生じたり、ときには仕事の進捗に影響が出たりする場合もあるでしょう。また、「Aさんが出社していることはわかっても、どこで仕事をしているかがわからない」といったケースも想定されます。またABWは働く場所を選ばないので、ペーパーレスでも業務の推進が可能な形態の仕事でないと導入が難しいという面があったり、オフィス外で業務に取り組む場合、PC紛失など情報セキュリティ面のリスクマネジメントの難易度がさらに高くなるという懸念もあります。
ABWを導入する目的
昔は働く=就社(会社に就く)という意識が強く、仕事の内容よりも「どの会社に入れるか」という軸で勤務先を選ぶことが多い傾向にありましたが、今は会社の名前よりもワーカー目線でスキルや経験をどれだけその会社で積むことができるか、という評価軸が重要視されるようになりました。このような時代変化と共に、生産性高く働き、豊富な経験が積める環境を整えてくれる企業がワーカーから選ばれ、働きやすいと感じる環境づくりのための一環として、ABWへの関心が年々高まってきたと考えられます。
ABWは今の会社の現状、今の働き方に柔軟に対応できるワークスタイルであるとともに、仕組みに不具合が生じた場合には、適宜修正を加えて、その時その時に適したオフィス形態に作り替えることが比較的容易ですので、このオフィス激動の時代にABWの考え方も取り入れた上で、ビルオーナーの立場で新しいテナントを迎え入れることができれば、一層不動産経営の幅が広がるのではないかと考えます。