不動産活用ネットワークは、不動産オーナーのお困りごとに対して最短最適な解決策を提供するために、企業の垣根を越えて協力し合うことを目的とした不動産業のプロ集団です 。 Q&Aコーナーではオーナー様からのお悩みと専門家による解決方法をご説明いたします。
今回のご相談
マンション管理評価制度創設の背景
そもそもこのような制度が創設されたきっかけを皆さんご存知でしょうか? 直接的な理由としては、マンション管理適正化法の改正があります。2022年度施行の改正マンション管理適正化法では、マンションの老朽化を抑制、管理不備となったいわゆる「スラム化マンション」などの適正化に向けた対応が社会的に喫緊の課題となっている現状を踏まえ、❶国による基本方針の策定❷地方公共団体による計画の策定❸助言、指導等の制度等の創設❹管理水準の底上げ❺管理計画認定制度の5つを骨子として法律が改正されました。マンションの適正な管理のフローを整備することにより、良質なマンションストックの供給、流通の推進に寄与することを目的として制度が創設されました。
マンションの管理に関する現状と課題
我が国の人口は減少傾向にあるなかでマンションストックの数は今も右肩上がりで増加を続けています。国土交通省の資料によると、平成30年度末の時点でマンションのストック数は約654.7万戸に達し、国民の約1割がマンションに居住しているといわれています。その一方で築40年を超えるマンションは現在81.4万戸(平成30年末時点)にのぼり、令和10年末には約2.4倍の197.8万戸、令和20年末には約4.5倍の366.8万戸に急増する見込みで、このような高経年マンションでは外壁や給排水管の老朽化といった物理的な劣化に加え、区分所有者の高齢化・非居住化(空き家化)が進行し、管理組合役員の担い手不足や総会運営や集会の議決収拾が困難となるなどさまざまな問題が顕在化しています。
地方公共団体とマンション管理業協会の評価制度の違い
まず地方公共団体の評価基準は、「管理計画認定制度」と呼ばれるもので、その基準を3つのカテゴリーに分類、17項目に各自治体の独自基準を加えた内容で「適合」「不適合」いずれかの評価を下します。3つのカテゴリーとは、長期修繕計画の作成、資金計画、規約等の規定で、その3つに加え、市区独自の地域性を考慮した上乗せ基準も考慮されます。評価の有効期間は5年です。
一方マンション管理業協会の基準は、「マンション管理適正評価制度」と呼ばれるもので、その基準を5つのカテゴリーに分類、25項目に国の基準を当てはめた追加項目を数値化した上で、その合計点(100点満点)により、マンションの管理状態をS~Dランクに評価分けします。5つのカテゴリーとは、管理体制(配点20点)、組合収支会計(配点40点)、建築・設備(配点20点)、耐震診断関連(配点10点)、生活関連(配点10点)の5つで評価の有効期間は1年です。本年(2022年)4月より制度化されましたが、制度の適用を受けることは努力義務の範囲であって強制ではなく、自治体によっては、独自の制度設計がまだ未整備の自治体もあります。
制度創設間もないため、効果はまだ未知数の部分も
マンションの管理評価制度は、マンション管理水準の維持向上、市場評価、地域としての価値向上が期待できるほか、予備認定を受けた新築マンションを取得する場合は、住宅金融支援機構の「フラット35」の金利が一定期間引き下げられるメリットも用意されています。
反対に管理評価のデメリットとしては、マンション管理組合の事務負担が増大すること、評価制度の認定を受けるために多くの申請書類を整備し、申請手続きを受けなければならないことなどが考えられます。この点は、マンション管理センターによる「管理計画認定手続き支援サービス(オンラインでの申請)」を利用し、事務負担の軽減が期待できますが、より不安視されるのは制度が公表化されることへの「悪評の定着」でしょうか。最初に認定された評価が仮に悪い評価であったとしたら、後から改善の策を講じたとしても、その前に”管理の悪いマンションだ”というレッテルが貼られてしまい、一度付いた悪いイメージを払拭することが難しくなる懸念というものも考えられるかもしれません。
マンション管理評価制度への期待、活用法
今まで何の客観的な指標もなかったマンションの管理力について、その目安が示されることは画期的なことですので、積極的に活用されるように期待したいです。マンションの管理組合にとっては、評価を受けることで改善のPDCAサイクルが作られ、実施した改善策の効果確認も容易になるでしょう。高い評価が出たマンションに対して、さまざまな優遇策が与えられれば管理組合の参加意識や、そのマンションに住んでいること自体を誇りに感じて、更なるマンション管理の向上意識が自発的に生まれることも期待できます。ただし、マンション管理は一時で終わるものではなく、継続的、長期的な努力が必要になるものでもあります。長い年月のなかで、住む人が変わり、建物は古くなっていくわけですから短期・中期・長期と改善目標を立案し、着実に計画を実施していくなかで、このような評価制度が、その時々のマンション管理の道標として、効果的に活用されることが望まれます。