不動産活用ネットワークは、不動産オーナー様が直面している課題に対して最短最適な解決策を提供するため、企業の垣根を越えて協力し合うことを目的とした不動産業のプロ集団です。 この『対談』では、毎回テーマを決めて、日々オーナー様から寄せられる「お悩み」や「お困りごと」に対し、【専門家による多角的な視点での解決策】をお伝えしていきます。
親御さん世代が法人化、相続でその資産管理法人を引き継いだというビルやマンションオーナーは多いのではないでしょうか。今回は、税理士法人で資産税の専門家として多種多様な事案に触れ、解決に導いているあいわ税理士法人の齊藤健浩 、二村嘉則と、賃貸不動産オーナー専門の保険のプロとして様々な課題解決を図っている保険ヴィレッジの斎藤慎治、そして管理会社の立場で不動産オーナーから不動産の更なる利活用などに関する課題に日々向きあっている株式会社ハウスメイトマネジメントの伊部尚子の4者で対談しました。
前編は、【資産管理 法人を引継ぐ ポイントと 注意点とは】をテーマにお届けしました。まだ、前編をご覧になっていない方は ⇒ コチラ
※税:あいわ税理士法人 | 保:保険ヴィレッジ | ハ:ハウスメイトマネジメント
資産管理法人における株主不明リスクと株価算定
伊部/ハ
前編では、「決算書の見方がわからない」など資産管理法人に関して寄せられるご相談やお悩みについて伺いました。後編は、相続に関係するところについてお聞きしたいと思います。
早速ですが、相続について考えてみようとした際に「誰が株主なのか分からない」というケースのご相談が結構多くあります。
伊部/ハ
それが、お亡くなりになっている方がいらしたりして、親族でも疎遠になっていると連絡さえも取れない。なかには、結果的に株主が10人以上という事例もありました。
齊藤/税
興味が無いからと簡単に手放してくれればそれほど問題にはなりません。但し、ご親族の方から「株を買い取って欲しい」というようなお話しになってくると色々と面倒なことが出てきます。
二村/税
税理士でも法人顧問や個人確定申告しかやらないという方も多いので、まずは顧問税理士に株価算定は可能か、相続についても相談できるのかは早めに相談しておく必要があると思います。
伊部/ハ
相続もだいぶ先のことだけれど、ざっくりと相続税がどれくらいかかるのかを把握するために、純資産を株数で割って株価を計算してみるというのは正解ですか?
二村/税
「純資産価額方式」ですね。もうひとつ「類似業種比準方式」という方法がありますが、一般的には、純資産価額方式のほうが、類似業種比準方式に比べて株価が高く算出されることが多いので相続税試算のスタートとして保守的に考えるならば、概ねそれでよいと思います。
齊藤/税
ただ、いざ相続となったらやはり専門家に任せるべきです。相続に際して、価値が分かりやすい現預金などとともにこのような資産管理法人の株式も遺産分割の対象となります。分割にあたっては専門家の計算による納得感のある株価を示せないとなかなかうまく進まないと思われますし、相続税の申告にあたってはなおさら精緻な株価算定が要求されることになります。
伊部/ハ
ざっくりと把握しておくことも大切ですが、早めに専門家に相談しておけば、いざ相続となった時に慌てずに済むということですね。
齊藤/税
はい。そして、関係者が多くなればなるほど、合意形成が難しくなりますから、やはりできる限り人数は絞るべきということもお伝えいただきたいと思います。
伊部/ハ
親戚同士で株を持ち合っているケースも多くあります(笑)
斎藤/保
個人のままで、法人にしなければ、あまり複雑にならない。様々な事情で株主が増えてしまうことなど含めて法人化の弊害ですよね。
齊藤/税
法人化により経費が多く使えるなどのメリットと、管理が煩雑になったり手間が増えてしまったりなどのデメリットとのバランスをどう考えるかですね。
資産管理法人に残るナゾの貸付金はどうすれば!?
伊部/ハ
お客様とお話しをするなかで、よく目にするのはナゾの貸付金です。
伊部/ハ
逆もあります。
恐らく、個人から法人への貸し付けは、会社を設立した際に個人所有の物件を法人に買い取らせるために貸し付けたものだと思いますが、相続になってから確認をしようにもなかなかナゾが説けません。
齊藤/税
同じ借入金でも金融機関からの場合は当然ながら借入時期、返済額、利率、返済期間などがはっきり分かっています。それが個人から法人への貸し付けの場合、特にこういった資産管理法人の場合は、個人と法人の区別がついていないオーナーさんが多く、同一の財布のような感覚でいるためによく分からない貸し付けが発生してしまっているのだと思います。
あくまでも個人と法人は別物なので、法人に資金的余裕があればきちんと回収していくべきでしょう。貸し付けたものを返してもらうだけなのでその行為に税金はかかりませんし。
齊藤/税
法人への貸付金自体が資産に含まれたうえで、相続税が計算されている前提ですが、その貸付金を相続した相続人は、法人から返済を受ける権利を引き継ぐことになります。相続人が返済を受けた場合も税金はかかりません。
伊部/ハ
法人から個人への貸し付けは、どのように発生するのでしょうか?
二村/税
社長が給料以上に会社のお金を使う必要があった場合が考えられます。
齊藤/税
先ほどお話ししたように、個人と法人のお財布がヒトツになってしまっている方も多く見受けられます。
斎藤/保
社長ですと法人のお金も自分のお金のように使ってしまって、足りないと会社が貸したことになってしまい、それが蓄積して残っている。
二村/税
恐らく、期末に足りない分を顧問税理士が帳尻をあわせて借入として処理したものと想像します。
伊部/ハ
どちらの場合も、相続の際に問題にはならないのでしょうか?
齊藤/税
常識的には、債務は不動産などの資産と一緒に相続されているはずなので、問題はないと思います。
伊部/ハ
要するに借入と資産がバランスしあっているということですね。
二村/税
はい。
会社に貸し付けている分、恐らく会社には現金や物件など資産があるはずですから、資金繰りに影響しない範囲で返済してもらえばよいことです。逆に個人が借りている場合でも、家賃収入さえあればお給料が出せるはずですから、そこから返済することで借入を解消することが可能になります。
齊藤/税
家賃収入は、災害などのトラブルが無い限り安定して入ってきます。毎月、キャッシュが貯まっていくわけですから、まず、誰にいくら貸しているのか、また借りているのかを整理してみる。そこで、利益が出そうならば修繕などを考えてみるのは如何でしょうか。
斎藤/保
必要な修繕をせずに銀行にキャッシュで残っていたら、相続税の対象になってしまいます。分かりづらいかもしれませんが、まずは損益計算書と貸借対照表を整理してみる。そのうえで、このままいったら10年、20年後にどのような資産状況になっているのか。修繕すべきなのか、途中で売却してしまうかなども考えられるのがよいと思います。
資産管理法人を相続する前に確認しておくべきポイント
伊部/ハ
まず、損益計算書と貸借対照表をまずは整理してみること。それからの計画を立ててみることは理解しました。ただ、不動産オーナーのご家族は全般的に親子の仲が悪いわけではないのですが、相続となると縁起でもない…みたいな雰囲気もあって、なかなかお話しが進みません。
斎藤/保
本来は、法人化する際にも親子でしっかり話し合って、納得したうえで設立すべきなのですが、気づいたときには法人が既にあって、いつのまにか引き継ぐことになってしまっているのが現状。
齊藤/税
まずは、状況が一番よくわかっている顧問税理士に相談してみるのが一番。先に話を聞いておけば、いざという時になってから「うちは相続や事業承継はやらないよ…」とお断りをされるという最悪の事態を避けることもできます。
伊部/ハ
決算だけお願いしている場合でも、とりあえず話を聞いてみて準備しておくことが大事ですね。
二村/税
行政がやっている無料相談会やインターネットなどを活用して、相続になった時に話ができる相談相手を見つけておくだけでもよいと思います。
二村/税
なかなかご家族だけですと難しい部分もあると思うので、我々のような外部の専門家を上手く活用いただければと思います。
齊藤/税
また、何かご質問があれば気軽におっしゃってください。
《終了》
あいわ税理士法人 齊藤健浩 ・ 二村嘉則
保険ヴィレッジ 斎藤慎治
株式会社ハウスメイトマネジメント 伊部尚子
前編では、【資産管理法人を引継ぐポイントと注意点とは】をテーマに対談していいます。