不動産活用ネットワークは、不動産オーナー様が直面している課題に対して最短最適な解決策を提供するため、企業の垣根を越えて協力し合うことを目的とした不動産業のプロ集団です。 この『対談』では、毎回テーマを決めて、日々オーナー様から寄せられる「お悩み」や「お困りごと」に対し、【専門家による多角的な視点での解決策】をお伝えしていきます。
不動産の世界では、様々なかたちでの高度利用が進んでいます。今回は、『アットパーキング』で月極駐車場のDXという新しい分野を切り開き、先日上場を果たした株式会社ハッチ・ワークの大竹弘と、駐車場の上部空間を空中店舗として有効活用する建物である『フィル・パーク』を展開する株式会社フィル・カンパニーの肥塚昌隆と小豆澤信也が、駐車場をテーマにこれからの「街づくり」を含めた、不動産活用の未来と在り方について対談しました。
前編は、【駐車場から読み解く未来の土地活用のカタチ】をテーマにお届けしました。まだ、前編をご覧になっていない方は ⇒コチラ
※フィ:フィル・カンパニー| ハ:ハッチ・ワーク
これからの街づくりと駐車場に求められること
大竹/ハ
前編では、主に個人や法人の地主さんが持つ駐車場を中心に土地活用のお話しをしてきました。後編では、地方自治体が抱える課題も含め、少し視野を広げたお話をしていきたいと思います。
大竹/ハ
早速ですが、人口減少という未来がみえているなかで、暮らし方や、価値観、産業構造が変わり、空き家などの問題にも注目があつまっています。土地の有効活用、街づくりのそのものを見直さなければならない時代がきていると感じていますが如何でしょうか。
小豆澤/フィ
私も同感ですが、その視点から考えると全国258箇所の『フィル・パーク』でお付き合いのある1,000を超えるテナントが提供しているサービスそれぞれが街づくりの武器ともなるコンテンツであり、我々がもつ「どのような地域属性をもつ場所で、何が喜ばれているのか」というノウハウは、これからの不動産活用、行政も絡めた街づくりのお役に立てるのではないかと考えています。
『フィル・パーク』の他業種にわたる「テナント」
大竹/ハ
それは、価値ありますね。実践に役立つデータとノウハウをもつコンテンツプロバイダーの立ち位置といえます。
小豆澤/フィ
空中店舗の美容室やフィットネススタジオ、学習塾などをはじめとする様々な業種業態のビジネス、1階のコインパーキングもしかり、カーシェアやシェアサイクル、最近話題の電動マイクロモビリティのレンタルステーションなども全てコンテンツです。
大竹/ハ
フリーの美容師に美容室の席を貸す店舗型のビジネスですよね?
肥塚/フィ
はい。テナント側が何を感じ、何を不便に思い、どう考えているのかを知るために試験的にはじめてみました。
小豆澤/フィ
当社は「まちのスキマを『創造』で満たす」をパーパスに掲げています。その土地がもつ価値を向上させて、土地オーナーや入居者、その地域に夢を与えられなければ、我々の存在価値はないと考えています。その一環としての試験運用です。
大竹/ハ
テナント側の気持ちを知ることで、それが施設の企画やテナント募集に活かされていくのですね。
兵庫県神戸市が所有する月極駐車場の場合
大竹/ハ
冒頭でも触れましたが、空き家問題をはじめとして地方自治体も不動産に関する多くの課題に直面していると考えています。先日、フィル・カンパニーとハッチ・ワークとの「地方自治体を対象とした次世代型駐車場開発のための包括的な業務提携」の契約発表させていただきましたが、そのあたりのお話しをしていきたいと思います。
小豆澤/フィ
今後、神戸市で推進される「ファーストワンマイルステーション構想」については、これからの世の中で求められることであり、我々も本気で取り組んでいきたいと考えています。
【ファーストワンマイルステーション構想】
ハッチ・ワーク社が提唱する月極駐車場を再定義することで生まれる「新たなモビリティサービス拠点」構想。少子高齢化などが叫ばれるなかで、生活に隣接する【ファーストワンマイル】にサービスの拠点としてのステーションを設置。そこにモビリティを活用したサービスプロバイダを集めることで、生活の利便性を高めることを目指している。
「ハッチ・ワーク<プレスリリース>2024.05.10」より
大竹/ハ
神戸市の場合、まずは外郭団体である株式会社こうべ未来都市機構が、月極駐車場として管理している市有地に『アットパーキングクラウド』を導入しました。
それにより事務効率の向上が図られ管理コストの低減が実現します。さらに車のオーナーがオンラインで月極駐車場の契約をすることが可能になりますので利便性が向上し、恐らく駐車場全体の稼働率も向上へと繋がっていくことが予想されます。
そして、神戸市民の皆様にとってより便利な場所となるように、市内に点在する駐車場のネットワークを構築。満車空車のリアルタイム情報を活用して、1日、1週間、1カ月といった短期利用が出来る『アットパーキングウイークリー』の機能を追加することで新たな利用ニーズを取り込みます。その結果、各種モビリティサービスのハブとして気軽に利用できるようにするべく実証試験を始動したところです。
小豆澤/フィ
当社としても、これまで『フィル・パーク』や『プレミアムガレージハウス』で培ってきたノウハウを活かして地域住民の方に喜んでいただけるサービスや施設、本当に役立つ機能性をご提案、ご提供していきたいと考えています。
大竹/ハ
当然、自分たちのチカラだけでは解決できませんが、神戸市が成功モデルになって、行政機関が管理所有する土地や不動産に関する課題を解決できるソリューションとしてのモデルパターンが完成すれば、他の地方自治体への横展開ができるのではないかと思っています。
小豆澤/フィ
実は、先日とある神奈川県の自治体のご担当者と打合せをしてきたのですが、神戸市での取り組みをご紹介したところ興味津々で、詳しくお話しを聞かせて欲しいということになりました。
大竹/ハ
ファーストワンマイルステーション構想などというと、とても大きなお話しだと思われてしますかもしれませんが、大上段に構えて何か特別なことをしようとしているわけではありません。
例えば、これまでも健康診断の健診バスはありましたし、キッチンカーもすっかり市民権を得ました。今後は、もっと色々な移動可能サービスが登場してくると思いますが、そのための場所を提供しようというお話しです。
100年に一度のモビリティ革命が起きているといわれていますので、電気自動車や自動運転、空飛ぶクルマからドローンなど新たなモビリティにとって必要となるインフラが必ず必要になってきます。そのための駐車場という需要も生まれてくるなかで、インフラになると考えています。近い将来、電気自動車の充電設備が不足するであろうことをイメージしていただけると分かりやすいと思います。
肥塚/フィ
充電設備の不足はイメージしやすいですが、これまでの駐車場という概念で考えていては需要の変化に追いついていけないとも感じます。
大竹/ハ
そうですね。延長線上で考えるのではなく、どこかで思考をジャンプさせるような必要があるのは確かだと思います。
不動産活用におけるIT利用
大竹/ハ
当社は、月極駐車場に関するポータルサイトの運営やクラウドサービスを提供しています。御社の場合もガレージハウスのポータル運営をされているなかで、当社の『アキマチ®』と同じようなサービスを提供されていらっしゃると伺いました。
少し前に不動産テックという言葉が流行りましたが、不動産活用においてデジタルの活用が必要だと感じていますが如何でしょうか。
大竹/ハ
コインパーキングでも、最近は車体の下のフラップがないタイプが増えてきました。これもいうなれば機械的なフラップからデジタルカメラによる監視というIT化がなされたともいえると思います。
小豆澤/フィ
確かにそうですね。
先ほど、キッチンカーが市民権を得たというお話しがありましたが、その出店場所は11時~14時以外は空きスペースだったりします。このような場所をIT活用して貸し出せれば新たな収益機会の創出、不動産の高度活用にも繋がっていきます。
大竹/ハ
おっしゃる通りです。駐車場の活用例を見て「こんな場所があったのか」と気づくでしょうね。
小豆澤/フィ
我々は、駐車場を含めて未利用地を活用した持続可能なまちづくりに貢献していきたいと考えています。アナログである、人との出逢いやコミュニケーションを生む場所をもっと利便性よく活用していただくためにも、やはりIT活用は必須だと思います。
大竹/ハ
不動産という究極的にアナログなものを、最先端のITを導入して利活用を推進することが大切ということですね。本日はありがとうございました。
《終了》
株式会社フィル・カンパニー 肥塚昌隆・小豆澤信也
株式会社ハッチ・ワーク 大竹弘
前編では、【駐車場から読み解く未来の土地活用のカタチ】をテーマに対談していいます。