加盟社リレー寄稿Q&A

賃貸物件を新築するとき、ターゲットはどのレベルまで絞り込む必要があるでしょうか?

不動産活用ネットワークは、不動産オーナーのお困りごとに対して最短最適な解決策を提供するために、企業の垣根を越えて協力し合うことを目的とした不動産業のプロ集団です。Q&Aコーナーではオーナー様からのお悩みと専門家による解決方法をご説明いたします。

今回のご相談

不動産オーナー
不動産オーナー
所有している土地の有効活用として、賃貸マンションを新築することにしました。その際、ターゲットを絞ったほうがいいと助言を受けましたが、どこまで細分化して設定するべきでしょうか?
久保田大介
久保田大介
「供給(賃貸物件数)」が「需要(借りたい方)」を上回っている時代に新築するのであれば、他の物件と差別化を図ることが重要です。そのためにはターゲットを絞れば絞るほどリーシングや設備投資などの面で有利に働きます。その理由を詳しく説明いたしましょう。

ターゲットはファミリー向け、単身者向けまで設定すれば十分?

かつて賃貸住宅を新築するとき、ターゲットは「ファミリー向け」もしくは「単身者向け」程度までしか設定しないことがほとんどだったように思います。
「ファミリー向け」についてはもう少しこまかく、DINKSや新婚カップルなのか、子どもがいるのかぐらいまでは考えられていたように思いますが、「子どもが大きくなったり、2人以上できたら自宅を購入するもの」という考えが根強くあったため、専有面積や間取りはあまりバラエティーに富んではいませんでした。
「単身者向け」も、「女性専用」ぐらいまでのターゲットの絞り込みはありましたが、さらに細分化されることは稀でした。
「万人に好かれる物件が良い物件」と考える方が多く、ターゲットを絞ることはリスキーだと思われてきたためです。実際、今でもそのように考えるオーナー様は少なくないようです。

「需要(入居者数)」<「供給(物件数)」の時代の新築

こうして”金太郎飴”のごとく、同じような専有面積、間取りの物件が数多く作り出されてきましたが、「供給(賃貸物件数)」が「需要(借りたい方)」を大きく上回るようになった結果、万人受けする物件は、駅近などの好条件がなければ誰からも選ばれないようになってしまいました。
このような時代に賃貸住宅を新築するにあたり、さらに”金太郎飴”物件を増やすのはいかがなものでしょうか? もちろん立地が良ければ、既存の”金太郎飴”物件から入居者さんを奪うことができます。しかし、新築もやがては古くなり、競争力を失っていきます。
そうならないためには企画の段階から差別化を図っていく必要がありますが、そのうえで基本となるのはコンセプトと、それに沿ったターゲットをしっかりと選定することです。ターゲットを絞り込むことにより、専有面積や間取りはもちろん、必要な設備やデザインなども検討しやすくなります。具体的な例を挙げてご説明いたしましょう。

ターゲットを絞り込むと、必要な設備やデザインが変わってくる

これは以前、「単身者向け」の新築コンサルティングを請け負っていたときのお話です。
メインターゲットは立地の特性から「社会人男性」と絞っていましたが、さらにかなりの高額所得者と設定することにしました。
このとき駐輪場をどのようなレベルにするかじっくり話し合いました。と言うのは、高額所得者はいわゆる”ママチャリ”を持っている方が少なく、自転車もかなり高価なものである可能性が高かろう、という話になったからです。そうであるならば、誰もが出入りできるようなオープンスペースに駐輪場を設けるのは得策ではありません。高価な自転車は盗まれたり、いたずらされたりするのが嫌なので、自分の部屋まで運んで保管する人も大勢おられます。その点を考慮し、駐輪スペースは建物内部に設け、防犯カメラをつけるなどセキュリティーレベルも上げることにしました。これはターゲットの「年収」という要素を絞り込まなければ出てこない発想です。そしてこの点を考慮しなければ誰からも利用されない駐輪場になる可能性もあります。

ターゲットを絞るとメリハリがつけられる

もうひとつ別の事例もお伝えしましょう。
こちらも「単身者向け」に新築した物件のお話ですが、先の事例とは違い「バリバリのキャリアウーマン」をメインターゲットにしました。そこではさらにターゲット像をこまかく、「服や靴、アクセサリーはかなりの数を持っている」「忙しいので家では料理をあまりしない」などというように設定しました。その結果、キッチンはW1200の小さなものにし、その分、広めのクローゼットを2つ設け、シューズボックスも大型のものにしました。専有面積にはどうしても限りがあるので、平準化せずメリハリをつけたのです。このマンションは私たちの企画意図通り、元気にバリバリ働く女性たちに選ばれ、満室稼働中です。
このとき、ターゲットを単に「社会人女性」までに留めていたらどうだったでしょう? おそらくキッチンは比較的広めのW1800クラスにし、クローゼットは1ヵ所、シューズボックスも平均サイズのものになっていたかと思います。そうなっていたら、今の方たちはきっと入居されていなかったと思います。

入居者ターゲット像はこまかく設定したほうがお得です

万人受けする物件というものは、人を平均化して見て、「普通の人ならこの程度でよいだろう」と考えてつくられた物件です。当たらなくてもいいからハズレないようにしたい。そうした心理が働き、多く生み出されてきたのだと思いますが、皆さんの周りにはそんな平均的な人ばかりがおられるでしょうか? 一見普通に見えても、好き嫌いや得手不得手は案外はっきりしているものではないですか?
それはきっと生活の中にも表れています。料理好きな人・嫌いな人、アウトドア派・インドア派、友達が多い人・少ない人・・・そうした個性をみんな多かれ少なかれ持っています。
潤沢に資金があって、万人に受けるよう設備や専有面積を充実させ、それでも家賃を低く抑えられるのならいいですが、なかなかそうはいかないと思いますので、ターゲットを絞り、必要なものにはしっかりコストをかけ、無駄は省くという考え方が賃貸経営ではとても大事だと思います。
それとは別に、ターゲットをこまかく設定した場合、そのターゲットに自分の物件の募集情報を届けるためにはリーシングのテクニックも必要です。この点もよく考え、プランニングしていただければと思います。

 

 

ABOUT ME
久保田大介
久保田大介
合同会社コンセプトエール・代表社員。有限会社PM工房社・代表取締役。 個性的なコンセプトを持った賃貸物件の新築やリノベーションのコンサルティングを柱に事業を展開している。 2018年1月よりウェブマガジン『ワクワク賃貸®』を配信している。