
不動産活用ネットワークは、不動産オーナーのお困りごとに対して最短最適な解決策を提供するために、企業の垣根を越えて協力し合うことを目的とした不動産業のプロ集団です 。 Q&Aコーナーではオーナー様からのお悩みと専門家による解決方法をご説明いたします。
今回のご相談

オーナー優位の時代の終焉
賃貸市場は長らくオーナー様優位の時代が続きました。家を借りたい方(=需要)が賃貸物件数(=供給)を大きく上回っていたため、空いてもすぐに次の方が決まるだけでなく、原状回復工事はほとんど退去者様負担、礼金もしっかり受け取ることができ、極論すればオーナー様は「退去されたほうが得」とも言える状況でした。
しかし少子高齢化が進み、需要が少なくなっていく一方で、新築物件はどんどん建てられ、供給数は増すばかり。日本全体では空き家率が20%を超え、完全に「供給過多」となっています。
そこで入居者さんに選ばれる物件にするために、エアコン等の設備を充実させたり、内装デザインを凝ったものにしたり、さまざまな工夫を施す必要が生じました。この記事をご覧くださっているオーナー様も、きっとそうした努力をされていることと思います。

レッドオーシャンからの脱却
ところが、どのオーナー様も設備やサービスを増強していくと、これには際限がありません。「隣りのアパートがエアコン1台なら、うちは全室に設置しよう」、「隣りが浴室テレビをつけたから、うちもつけなければ」などと競争は激しくなるばかり。そして次に待ち受けているのは価格競争です。つまり家賃を下げたり、敷金・礼金をゼロにしたりして、募集条件を引き下げていきます。まさに「レッドオーシャン」の世界です。
コストが増加していくのに売り上げが減ってしまうのでは、どんな商売でも続かないことは明白。にもかかわらず、この競争を延々と続けておられます。それはおそらく、「ほかに打つ手がない」と思っているからではないでしょうか?
このレッドオーシャンの世界から脱却し、ブルーオーシャンを確立していただく手段がコンセプトを設定し、入居者様のターゲットを明確にすることなのです。
居酒屋を例に考えると・・・
考えていただければわかると思うのですが、市場で売り買いされている商品は、ほぼ全てのものにコンセプトがあり、購入者のターゲットが設定されています。
そうではない商品を探してみましたが、なかなかありません。需要があるのに供給が極端に少ない商品であれば、つくって市場に流すだけで確実に一定数売れるでしょうから、コンセプトもターゲット設定も不要です。既存の商品やサービスも最初はきっとそうだったのでしょう。
たとえば街に1軒しか居酒屋がなかったとしたら、外でお酒を飲みたいときに街の人はみなそこに集うでしょう。そのときは「居酒屋」というだけで立派に商売が成り立ちます(言ってしまえば「居酒屋」ということ自体がコンセプトで、「お酒を飲みたい人」がターゲットですね)。
しかし居酒屋が次々とオープンしていき、お酒を飲みたい人の総数を上回るようになると「うちは日本酒がたくさんそろっている」、「うちは九州料理が得意」などといった差別化が必要になってきます。今の賃貸市場はこれと同じ状況だと私は思います。
賃貸業界はゆでガエル状態
「ゆでガエル」理論をご存知でしょうか? 変温動物であるカエルを鍋の中の水に入れ、火をかけお湯にしていくと、はじめのうちはカエルは平然とその中に居続けます。しかしグツグツ煮えたぎり熱湯になると、やがて死んでしまいます。
これと同じで、時代の変化に気付かず旧態依然としていると、気付いたときには手遅れ。そのまま消えていくことを余儀なくされてしまいます。
これを「ゆでガエル」理論と言いますが、賃貸業界は多くのオーナー様や不動産会社もゆでガエルになっていやしないでしょうか?
供給が需要を大きく上回っているのに、これまでと同じ物件をつくり、同じ方法で貸そうとしている。時代の変化に対応できていない方が多い。この状態はまさにゆでガエルそのものだと思います。

ブルーオーシャンをつくるには努力と工夫が必要です
ゆでガエル状態から一歩先んじ、命を長らえるためには、他の市場に見習い、コンセプトとターゲットをしっかり定めた商品(=賃貸物件)をつくることが必要です。そうした物件をつくることで、ブルーオーシャンの世界で賃貸経営を続けていくことができるようになります。
しかし、ブルーオーシャンの世界をつくるのも容易ではありません。新しい世界をつくるためには新しい仕組みや考え方が必要です。
コンセプト賃貸の場合、この点が未成熟で、従来のやり方で入居者募集をし、管理を行うため、苦戦してしまう例が多いです。ただ、その点をもって「コンセプト賃貸なんてやめた方がいい」と言い切ってしまうのもいかがなものでしょうか? そうした声に耳を傾けず、ブルーオーシャンの世界づくりに取り組んでいただきたい。私はそう願っています。